第72話

「薫、ずっと好きだった。よければ俺と付き合って」



「うん…っ!断るわけないじゃん…っ」



怜央に思いっきり抱き着くと、抱きしめ返してくれた。



「薫は相変わらず身長小さいのな」



「なっ、怜央が伸びすぎたんでしょ!」



私より顔一個ぶんくらい大きい怜央の顔を見上げる。

昔はそんなに身長差なかったんだけどな。



そんなことを考えていると、どこからともなくパチパチと拍手が聞こえてきた。



「怜央の片思いかなー、なんて思ってたけど両片思いだったとは。まぁ、二人とも無事でよかったよ」



この声は…朔!なんでここに…?



「俺はリーダーのもとで働いてるから、怜央とも知り合いなんだ。あ、もちろんリーダーについての情報は知ってるから怜央の味方だよ」



リーダーの部下だったのか。じゃあ、私が香澄と同一人物って事もバレてたりする…?



「朔、私が九条香澄と同一人物ってこともわかってたの?」



「え…」



え…?

朔は驚いたように私を見る。



「まさかとは思ってはいたけど、ほんとに同一人物とは思わなかったよ。…はぁ、同一人物なら諦めるしかないじゃん」



気づかれてなかったのか。それより、諦めるってどういうこと?



「おい、朔」



「はいはい。流石に彼氏持ちに手を出したりしないってば」



怜央と朔の話についていけないでいると、後ろから誰かが歩いてくる足音が聞こえた。



「あそこの二人は置いといて、おめでとう薫」



「薫は好きな人がいたんだな、おめでとう」



「薫の事情をある程度知っていた身とすれば、見守っている保護者の気分だったから安心した」



凪、律…それに蓮まで。


凪と律が、「何が保護者だふざけんな、俺ら全員の総長だろ」といって蓮に掴みかかっているのは、うん。じゃれあいだと思っておこう。



「ほら、三人とも!それに、みんな!アジトで爽が待ってるでしょ!帰るよ!」



リーダーや蓮が言っていた謎の人物についてはもう少し後で考えよう。

今は、この瞬間を楽しんでいたいな。

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