第66話

蓮がなぜここに?と思うのと同時に、信じたくなかった事実も伝わってきた。

やっぱり黒狼側なんだね、蓮。



「確か、天王寺てんのうじだったか。兄さんの脳内にメモリーチップを入れたのが」



天王寺…リーダーの名前だ。



「そのデーターがとんだら、俺達でも天王寺を抑えるのは厳しいぞ」



「わかったよ、残念だけどまた今度だね」



二人が話している間に、凪が距離を詰めて柊に後ろから殴りかかる。

今なら行ける!一発でも食らえば、しばらく動けなくなるはず。そう思っていた、だけど。



「っ⁉」



柊はいとも簡単に片手でその拳を受け止めた。



「僕に一発食らわせるなんて、お前じゃ百年はえーよ」



そう言って、足蹴りで凪を一瞬で地面に倒すと顔面に拳を容赦なく落とした。


強すぎる、あの凪が一瞬で…。しかも、殴る瞬間すら見てないのに。

どうしたらあいつを止められる?


そう思っていた時、足に何かが当たった。


「これって…」


足元に転がっていたのは注射器だった。

あの時柊が私に使おうとしてたやつだ。

確か即効性の睡眠薬だったはず。…これさえ柊に打ち込めれば可能性があるかも。



私がそう考えている間に、殴り合いが始まっていた。



「怜央、ちょっと私に考えがある」


私は近くにいた怜央に声をかけて、作戦を伝える。

怜央が協力してくれれば、行けるかもしれない。



「わかった、だけど気を付けろよ」



「うん」

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