第65話

「……闇來か、少し厄介になってきたね」



柊は少し険しい顔をして凪たちのほうを見ていた。

闇來がいれば柊を抑え込めるかもしれない。


「俺らの総長返してもらうよ」



「僕から奪えるもんなら、やってみろよ」


その瞬間、怜央の頭に銃口が突き付けられた。

こいつ、背後に回り込むまでが異常に速い。全然気づけなかった。



「全員動くなよ。少しでも怪しいそぶりを見せれば、君たちの総長の大事な人が死んじゃうよ」


少し楽しんでるようにも聞こえるその口調に震えが止まらない。

ずっと憎かった兄を殺せることに喜びでも感じているのだろうか。



「……狂ってる」


私のつぶやきなんか彼に届くはずもなく、柊はこの状況に顔を綻ばせていた。

何か、何かこの状況を変えるものはないの?考えを巡らせるも、焦って何も思いつかない。


「怜央を殺すのは流石にダメだよ、総長。あいつらが何してくるか分かったことじゃないだろ?しかも、脳を狙うなんて」


喋りながらゆっくりと誰かが歩いてくる。

誰?この声聞き覚えがある。まさか……。



柊は銃をゆっくりとおろしながら、声が聞こえるほうを睨む。

その隙に怜央が柊から離れて間合いをとる。



「お前も邪魔をするのか」



その人物は深くかぶっていたフードを取り、


「久しぶりだね、みんな」


そう言って、にっこりと微笑んだ。


私の目に映ったのは紛れもなく、蓮の姿だった。

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