第58話

「あははっ、これでようやく僕のものになるんだ」



嫌だ、吐き出さないと。怜央のことを忘れちゃう。

そう思っていても焦りでうまくいかない。



「大丈夫、あと20分もすれば全部忘れて僕とずっと一緒に暮らせるから」



絶対に嫌だ、怜央のこと絶対に忘れたくない。



「だからそれまで眠ってて、起きたら全部忘れているはずだよ」



柊はまたあの時のように首筋に睡眠薬を打ち込もうと、注射器を取り出した。



「やめて…お願い。お願いだからっ」



涙が止まらない、私は…どうしたらいいの?



バンッ



扉が開く音がした。



「煌っ!」



あぁ、最後に、最後に見れた…。ようやく会えた。



「……怜央っ」



そこには私の大好きな彼がいた。

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