第47話

学校に行ってると夏休みとなっている期間、俺は煌に対戦相手をしてもらっていた。


対戦相手をしているうちに、話をすることも多くなっていった。



―――煌を好きになるのはあっという間だった。



「怜央、今日も勝負する?」



「今日こそは勝つよ」



「ふふっ、どーかなぁ」



いつも通りの日常だった。普段と変わらないはずだった。あの日までは。



「……なんでいるんだよ、—――零斗」



「久しぶりだね、お兄ちゃん」



冬の季節を迎えようとしていた、11月上旬。零斗がアジトに姿を現した。



「零斗って、あなたの弟なの?怜央」



俺は頭が混乱して答えることができなかった。

俺のことが嫌いならなぜここに来る、そもそもなんでこの場所が分かったんだよ。



「あれぇ、そこにいる女の子は彼女か何か?」



ニコニコと気味が悪い笑みを浮かべながら俺たちのほうへと歩いてくる。



「…にげろ」



「え?」



「早くここから逃げろ!リーダーに連絡するんだ!」



俺は少し突き飛ばすように煌のことを押した。



「彼女を逃がすなんて、優しいね」



零斗は一瞬にして間合いを詰めて、俺の背後に立った。



パァン!!


天井に発砲する音が鳴り響いた。



「はい、そこの彼女。動かないで。動いたら怜央殺しちゃうよ?」



零斗は銃を取り出すと、俺のほうに銃口を向けた。



「…零斗お前の目的はなんだ」



零斗は驚いたように一瞬目をぱちくりさせると、「話が早くて嬉しいよ」と微笑んだ。



「僕の目的は、彼女だよ。煌を手に入れること」



「させると思うか?」



「そう言うと思ったけどさ、この状況がどうにかなるとでも思ってんの……っ⁉」



ドスッ



「かはっ…」



零斗が俺に意識を向けている隙に、背後から煌が蹴りを入れた。

それと同時に銃を奪って、倒れている零斗に銃口を向けた。



「形勢逆転だよ、零斗さん。怜央に近づかないで」



「……ふふっふふふっ…あはははっ!」



零斗はおかしくなったように笑うと、ゆっくりと立ち上がった。



「はぁ、おもしろい。ほんとにおもしろいね煌。僕、君みたいな人好きだよ」



「今ここから立ち去って、二度と会わないというのなら逃がしてあげます」

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