第45話

まだ中学生で、小さいころから友達もいなかったから行く当てもなかった。


だから、暗黒街に俺は足を踏み入れた。暗黒街は、暴走族の溜まり場だと聞いたことがある。


少しでも休めるかもと思い、脇道に入ったときだった。



ドスッ


「お前さぁ、自分の立場わかってないよね?」



「ひっ…!かっ、勘弁してくれ!どうか…!」



二人の男が喧嘩していた。蹴られて苦しそうな男に何度も何度も蹴りを入れる男に震えが止まらなかった。


こいつは明らか違う。この地域で誰よりも強い。近づいてはいけない。俺の本能がそう言っていた。

逃げたくても恐怖で足が動かなかった。



蹴られていた男の意識がなくなったとき、その男は立ち上がり俺のほうへと足を向けた。



「…こんなとこで何してるの?少年」



さっき感じた恐怖を一切感じさせない笑みだった。



「いっ、いや。何も…」



「あははっ、そんな警戒しないでよ。さっきの男みたいに蹴らないし」



ヘラヘラしているその男は本当に同一人物なのかと疑ってしまうほどだった。



「あ、でも俺君知ってるよ。柊家の長男でしょ」



「な、なんで…」



「この地域は俺の縄張りだから。なーんでも知ってるよ」



嘘ではないと思わせる何かがこの男にはあった。



「で、ここで君は何をしたいの?」



「え?」



「この暗黒街に来て何をしたい?それが分からないようじゃ、ここに来るのはまだ早いよ」



何をしたいか…。俺がここで何をするべきなのか…。



「俺は…あなたみたいになりたい」



「普通の生活はできないよ?それでもいいの?」



「それくらい覚悟はできてる」

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