第44話

零斗は優秀だった。俺が必死で手に入れたものを簡単に取っていった。

父は零斗をとても褒めた。「怜央とは違って優秀だな」と。


中学2年の時だった。期末テストで零斗に負けた。初めてだった。

勉強に関しては負けたことが無かったから、父もまだ許していたのかもしれない。


この結果はすぐ父の耳に入った。

父が階段から上がってくる音がした。母が必死でそれを止める声もした。


だが、俺の部屋に最初に入ってきたのは零斗だった。



「お兄ちゃん!俺テストで一位取ったんだぁ。初めてお兄ちゃんに勝てたよ!」



「……知ってるよ」



俺が知っていることなんてわかるはずなのに、零斗は笑顔で俺に話しかける。



「まぁ、知ってるよね!お兄ちゃんこれから父上に怒られちゃうもんね!」



「……」



「これで僕の目的も達成かなぁ」



「目的…?」



「そう!」



俺が聞き返すのを待っていたかのようだった。



「お兄ちゃんの居場所を完全になくすことだよ。お兄ちゃんは僕にとって邪魔なんだ。わかる?」



「勘のいいお兄ちゃんならわかるよねー」と楽しそうにしゃべる。



「俺に何してほしいんだ」



「…僕の前から消えろ。それだけ」



その言葉を発したときだけ、零斗の目は光を何もうつさないような暗い色だった。

ただただ、憎い、目障りと言う感情しか出ていなかった。



俺はその時逃げるように家から出て行った。

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