第40話

「俺は怜央じゃない。愁だ」



そう言って、またパソコンをいじりだす。片腕の手首には手錠がつけられていた。

まるで、本物の所有物だと言う証のようだった。


こいつは黒狼総長の柊怜央の双子の兄だった。

過去のように話すのは、こいつの存在が無いものとして社会的に消されているからだ。

戸籍も全て消されている。


今は愁と言う名でリーダーの手下として働いている。



「本当はお前が怜央だろ」



俺がそう言うと俺のほうを睨み、「余計なことを話すな」と冷たく言い放った。

今、黒狼の総長をやっているのは双子の弟の柊零斗ひいらぎれいとだ。


こいつらの事情は詳しくは知らないが、まぁ闇深い家族だということは確かだ。



「それよりもここに来た理由を話せ。俺もそこまで暇じゃない」



「お前がやけに世話を焼いているやついるだろ」



「……」



「そいつ、闇來の総長もやってたみたいで柊に捕まったぞ」



「…は?」



「柊がずっと探してた女が煌だったらしい」



こいつがあれ程世話を焼いているやつのことを見捨てるか、見捨てないかでかなりこの状況が変わってくることは確かだ。

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