第34話

――律side—― 



「っ…!」



一瞬何が何だかわからなかった。薫は僕たちを裏切ってたんだよ?裏切りが分かったほうが今後のためにもなるでしょ?

そう思ったから伝えたのに、凪は僕の頬を殴った。



「なんで…」



「お前はそんなことで薫を裏切り者にするんだな。俺たちをまとめてきたのは誰だよ、俺たちを助けてくれたのは誰だよっ!」



凪がここまで怒りをあらわにしているのは初めてだった。


……確かに、僕を助けてくれたのは薫だった。

僕はひとりだった。両親も僕のことを捨てた。

いつも通り暗黒街で喧嘩を売ってきたやつらを、倍にして殴り返して時間をつぶしていた僕の前に薫が現れた。


僕を闇來に迎えてくれた。仲間にしてくれた。



「……薫」



「じゃあお前はその恩をそんなささいなことで無駄にするんだな」



「っ!………ごめん、僕が悪かった」



誰にでも話せないことはあるのに…。

僕は考えなしの発言をしてしまった。



「それはそうと、薫が連れ去られたんだ。蓮が黒狼側なのはもうわかっている。だから、爽に薫がいる場所を探ってもらっているとこだ」



やっぱり情報は回ってるよね。蓮に関しては、薫が決めることだろう。

薫なら許してしまいそうだけど、でもあの優しさにたくさん助けられた。



「わかった。僕はある程度メンバーを集めておく」


薫が女だったことは正直信じられなくて戸惑ったけど、薫は薫だ。僕を助けてくれたことに何ら変わりない。

僕が少しでも薫のために役に立つんだ。

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