第89話
「聞かせて。胡桃の気持ち」
「うん。私、この1ヶ月考えた。どうするのが一番いいかって。賢人はあの時言ったよね。美耶を忘れるために私と結婚したいって」
「ああ」
「それは私が幼馴染だから?美耶の親友だから?なら他の人でもいいんじゃない」
「そんなわけないだろ。誰でもいいわけじゃない。じゃなきゃあんなことしない!結婚しないかなんて言わないだろ!」
手首を掴まれ身動きが取れなくなる。
眼鏡をかける賢人は何だか新鮮で見つめられるとドキッとする。
「ご、ごめん……」
そうだとしても賢人は私を幼馴染としか思ってなくて、私の気持ちには気付きはしないだろう。
これから先ずっと。
すぐには美耶を忘れることもできないと思う。
その度に私は利用されてたくさん辛い思いをすると思う。
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