第91話

チャラララ~


着信音が部屋に響く。


もちろん初期設定のままである。



いちいち変えるなんて面倒臭い。



パーカーのポケットに入れっぱなしだったスマホをタップして耳当てる。



「はい」


と肩と首にスマホを挟んで応答した。


だって今、両手塞がってますから。



『もしもし、暁ちゃんかい?』


「うん。私に掛けてきたんでしょ?伯父さん」


フフフと笑う。



『あぁ、そうなんだけど。登録を違う名前にしているからね、念の為の確認さ』


と伯父さんも笑う。



万が一、伯母さんや泉に見られた時に私だとバレないように違う名前で登録しているらしい。


伯父さんはおっとりしてるが、そう言う所は用意周到だった。


スマホを購入した時に伯父さんには連絡しておいたんだ。


ママに何かあった時に知らせてもらわないといけないから。





「アハハ、そうだったね。所で何か用だった?」


『いや、今の所は大丈夫そうだよ。泉は彼氏達を使って西の街に侵入しようと画策しているらしいけど。彼氏達が怯えてしまって話にならないようだ』


「へぇ。前にこの街に来た時に余程な目に遭ったのね」


『ああ、そうらしい』


伯父さんと私は笑い合う。



美智瑠さんが排除したとか言ってたしなぁ。


あの人、ああ言う連中には容赦無さそうだし。


蛇鬼も皮をひんむかれたのかも知れない。



「そう。暫くは安心できそうね」


『ああ。そうだね。だけど妻が貝塚と何かを企ててるかもしれないから、気は抜かないようにね』


「了解です」


『暁ちゃんには迷惑ばかりかけてごめんね?』


「良いですよ。伯父さんが味方してくれてるじゃないですか?」


『本当に優しい子だよ、君は。あぁ、そうだ、稜さんは元気だったよ。今日会いに行ったけど顔色は良かった』


「ありがとう、伯父さん」


『いや、私に出来ることはお見舞いぐらいしか無いからね』


悲しげな声が聞こえた。


伯父さんもまた、泉達に振り回されてる一人だと思う。



「私が迎えに行けるようになるまで、ママをお願いします」


『ああ、任せてくれ』


伯父さん...お願い。


ママが寂しくないように。


  


それから少し世間話や近況を報告して電話を切った。




伯父さんや泉はまだ諦めてないみたいだけど、今の所は休息ってとこね。


早く諦めてくれれば、ママに会いに行く事もできるのになぁ。


本当、面倒臭い。

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