第90話

なんなの?あの男。



プリプリ怒りながら自室へと階段を上がる。



あのタイミングであの場所で話し掛けるとか無いわ。


ほんと、無い。



美智瑠さんもよ。


名前なんて呼ばないでよね。



あり得ない。


取り巻きの女の子達に逆恨みされたらどうしてくれんのよ。




ポケットから取り出した鍵を鍵穴に差し込んでクルッと回した。



ドアを開けて中に入ると、靴を脱いで部屋へと向かった。


手に持ってたショップバッグを二人がけのソファーに放り投げた。


そして、その隣にポスッと座る。



本当、あいつらあり得ない。


自分達がどれだけ影響力持ってると思ってんのよ。



上手く交わせたから良いものを。


ほんと、疲れるわ。



って言うか、シルバーアッシュの彼は太陽の下でも纏う空気は黒なのね?


彼の周りは他と比べてだいぶと異質だ。



腰を抱いてた女性綺麗だったなぁ。


あんな綺麗な人が居るのに、女遊びするとかないわ。



露出狂で貞操なしってどういう事?




「まったく有り得ないね」


背もたれに体を預けて天井を見上げた。



『よう』


あいつの声が頭に甦る。



あの低くてハスキーな声。


ドキッとしたのは気のせいじゃない。


人間としてはどうかと思うが、あいつの声はイケボイスだ。


それは認めよう。



だ...がしかし、ダメ男であるのは間違いないわね。




て言うか、そもそも何の為に声を掛けたんだろうね?


彼女の腰を抱いて他の女に声掛けるとか頭悪いんじゃない?



ま、まさか注文来る度に行かずにはぐらかしてる腹いせ...。



いやいや、流石にないか...。


だって、この街の支配者とか言われてる人だしね。


流石に、あんな小さい嫌がらせしないわよね。



自分のくだらない妄想を頭を振って掻き消す。



でも、本当にそっちだったら、ちょっと面白いけど。


あの何を考えてるか分かんない彼でも幼稚だって事になると笑える。




まぁ、どうでも良いや。


大して興味ないしぃ。



上半身を持ち上げるとスクッと立ち上がった。



「荷物片付けよう」


折角買ってきたのにシワになっても嫌だからね。


ショップバッグを手にクローゼットへと向かった。

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