第89話
国分寺愛弓(コクブンジアユミ)肩までの黒髪に清楚な容姿。
大きな二重に通った鼻筋、100人中99人は美人だと言うでしょう。
幼さを少し残す暁さんとは違う部類の美人だと言えるでしょう。
お金持ちの家で育ち、なに不自由のない暮らしをしてきたお嬢様は親の会社に就職し、気ままに過ごしているみたいですがね。
どうにもいけすかないんですよね。
紅葉の前だけ良い子ちゃんぶるあの姿も。
俺は彼女の背中をそっと睨み付けた。
歩き出した紅葉に彼女はもう何も聞かなかった。
去っていった暁さんが紅葉に興味を示さなかったのを見ていたからでしょう。
彼女の中では紅葉に色目を使いさえしなければ、興味の対象から外れるのでしょうね。
突き刺さる視線を受けながらも、紅葉の寵愛を貰っていると勘違いして優越感に浸って歩く姿は実に滑稽ですね?
紅葉の憂いを帯びた表情にも気づかないんですからね。
俺は密かに眉を寄せた。
「なぁなぁ、あの綺麗な子なんだよ?」
俺の隣を歩く謙吾が肘で突っつく。
興味津々ですって顔してますね?
「あの方はle lacrime di la dea(レ ラクリメ デイ ラ デア)のスタッフですよ。綺麗な女性でしょ?」
ゆるりと口角を上げる。
「ま、マジで?あんな綺麗な子が居たのかよ。んだよ、早く教えろよぉ」
と口を尖らす謙吾。
「彼女の働いている場所は不可侵なのを忘れないでくださいね。余計なちょっかいは止めてくださいね」
釘はしっかり刺しておく。
紅葉が気にしてる彼女に、余計なちょっかいを掛けられるのは困りますからね。
もしかしたら、彼女は紅葉に感情を与えてくれる唯一の人になるかも知れないんですから。
前を行くこの彼女じゃなく、暁さんが紅葉を変えてくれる気がするんです。
「えぇ~なんだよ」
ブチブチ言ってもダメですからね。
「なんだよじゃありませんよ。ああ、それと言い忘れてましたが彼女の愛車は真紅のNINJA250です」
俺はそれだけ言い残すと、唖然と口を開いたまま固まる謙吾を置き去りにした。
申し訳ありませんが、探してるバイクの彼女も手に入らない事を肝に命じてくださいね?
「なんだよぉ~それぇ~!」
と落胆した叫び声が聞こえてきました。
御愁傷様、謙吾。
人間諦めが肝心ですから。
俺はほくそ笑む。
 ̄ ̄ ̄ ̄
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
美智瑠side
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