第87話

様々な視線も無視して歩き出した私は、もう止まるつもりはない。


たとえ、「待てよ」こんな風に声が掛かってもね?



面倒な事に巻き込まれなくないのよねぇ。


ほら、女の嫉妬は質悪いから。



だから、シルバーアッシュの鋭い瞳が背中に刺さってても無視するのです。


彼よりも隣の女性と周りの女の子の視線の方が猟奇的だからね。





「暁さん」


駆け寄ってくる足音と声に立ち止まらずに顔だけ向ける。


だから、構うなっての。



「いつもご贔屓にありがとうございます。今後もカフェのご利用よろしくお願い致します。本日はプライベートですので失礼いたします」


営業用のスマイルを浮かべて丁寧に頭を下げる。


関わらないでね?の意味を込めた微笑みを浮かべた私の瞳は笑ってなかったに違いない。



苦笑いの美智瑠さんは私の意思を尊重してくれたらしく、それ以上は近付いて来なかった。



ここまでされちゃ追い掛けて来れないよね?


ニシシと心の中でほくそ笑みながらその場を後にした。












だから、気付いていなかった。


シルバーアッシュの彼が、獲物を狙うような鋭い瞳を私の背中に送っていたことを。



そして、その事が全てを巻き込んで大きな波へと変わっていくのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る