第86話
「ねぇ、一緒に居る女ってなんなの?」
「噂の婚約者じゃない?」
「えぇ~うそぉ」
「腰なんて抱いてるぅ~」
何を騒いでるのよ、この人達は?
嫉妬丸出しの女って...綺麗じゃないのよね。
だから、恋愛感情なんて面倒臭いのよ。
泉によく向けられてた嫉妬に燃えた瞳を思い出す。
あの子にはやたらと敵視されてたのよね。
お陰でこんな所まで逃げる羽目になったんだし。
あぁ、くだらない。
あんな町には未練なんて無いけど、ママと離れなきゃいけ無くなったのは誤算。
そう言えば、ママ元気かな?
帰ったら電話してみよう。
そんなことを呑気に考えていた私は気付かなかったんだ。
店の前を囲むように集まっていた女の子達が左右に割れて人垣を作っていた事を。
だって、騒ぐ女の子の集団には興味なんて無かったんだもの。
だから、
「よう」
と声を掛けられるまで彼の存在にすら気付いてなかったんだ。
ハッ?と顔を向けた店先。
高級ブランドのドレスを見に纏った綺麗な女性の腰を抱いたあのシルバーアッシュの男が居た。
漆黒の瞳が私を捉える。
あら?この間の女の子とは違うのね?
なんてぼんやり思う。
この間の下品な女ってとは違って、今連れてるのは血統書付きって感じの女性。
親しげにシルバーアッシュの彼の胸元に頬を寄せてる女性は、綺麗な微笑みを浮かべてる。
こっちが本命?って所かしらね?
解析しつつ、ゆっくりと立ち止まる。
彼と彼女の後ろには美智瑠さんと、もう一人茶髪で可愛らしい感じの男の人が居た。
美智瑠さんと目が合うと微笑まれた。
もう一人の人は、私を不思議そうに見てる。
なんなのかなぁ~。
ざわざわする周囲に目を向ける。
うわぉ...なんか凄く見られてるじゃん。
正しくは睨まれてるって感じだけど。
いやいや...なんなのさ?
こんな所、さっさと退散するに限るわね。
シルバーアッシュからの視線を感じて顔を戻す。
そんなに見られても困るんだけどなぁ。
しかし、本当に綺麗な男だ。
隣の女性とお似合いじゃないか?
ま、なんでも良いけど。
か~えろ。
軽く会釈して、何事も無かったかの様に歩き出す。
声を掛けられた意味もよく分かんないしね。
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