第85話

一応、持ち込んだ全てを着てみた。


元々、全てを買うつもりだし。



だいたい、冒険はしないので似合わない服などほぼない。



服を持ってレジに向かう。



「いらっしゃいませ」


と言いながらカウンターに置いた服をレジに通していく店員をぼんやりと見つめる。



一人だと買い物も早く終わっちゃうなぁ。


この後、どうしようか?



レジカウンターの奥にある時計は、部屋を出てまた一時間を経ってない事を教えてくれてる。


私は、寂しい子だな。




「12,960円でございます」


と言われて13000円を手渡した。



「40円のお釣りと商品でございます」


とお釣りと品物を詰めたショップバッグを手渡された。



「あ、どうも」


と受け取って店を出る。



白い紙のショップバッグは結構かさ張る。


こんなの持ってブラブラするのも面倒臭いし、帰ろうかな?



店の前で立ち止まってどっちに向かおうか考える。


左なら帰宅で、右なら買い物続行。


迷ってる時点で帰りたい気持ちが7割だ。



人混みも疲れたしねぇ。


アイスワゴンでアイスでも買って帰ろ。 


カフェの数件手前に停まってる黄色いワゴンを目指して歩き出す。



来た時と同じ様に、高級ブティック店が建ち並ぶ当たりを通りすぎようと進む。


だけど、来た時よりも少し騒がしく思うのは気のせいだろうか?


なんだか女の子達が浮き足立ってると言うか、ソワソワしてると言うか。


しかも、一角だけが人だかりが出来てるような?



有名人でも来てるのかな?


まぁ、私には関係ないけどね。



帰宅するために動かす足は止まらない。



ちょっと、邪魔だな。


有名ブランドの店先に集まる人達が歩道を我が物顔で塞いでる。


しかも、『キャーッキャーッ』煩いし。



どっからそんな声出るのよ?


同じ女として疑問に思う。



「邪魔...」


目の前の通路を塞ぐ女の子に聞こえるように声を出す。



「...す、すみません」


以外にも派手な見掛けからは考えらんないほど、素直に道を譲ってくれた。



人は見掛けによらないらしい。



お姉さんありがとう、と心の中で言いつつ人波を掻き分けて進む。

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