第78話

「ああ。私は貴方の敵ではないですよ。むしろ味方よりだと思います」


あぁ、胡散臭い。


本当にこの人胡散臭いよ。



「敵でも味方でも無くて良い。もう関わることもないと思いますし」


余計なことには近付きたくないから。



「さぁ、それはどうでしょうか?私も紅葉も、あ、紅葉とはあのシルバーアッシュの男ですが。貴方に興味を持ってしまったようです」


ようですって何よ、他人事みたいに。



「迷惑です」


興味なんて持たれたくない。


関わるとろくでもないことに巻き込まれそうだし。


私は静かに平和に生きたいだけだもの。



「おやおや、嫌われましたか?」


ちょっと、眉を下げてそんなシュンと落ち込んで悲しそうな顔しないでよ。


私が悪いことしてるみたいじゃないのよ。



「そ、そんなんじゃ無いですけど...」


「ああ、それは良かった。今後も宜しくお願いしますね」


ニッコリと笑った大木さん。



うぁ~騙された。


宜しくしたくねぇ。




「で、本当の目的ってなんですか?」


ここに何しに来たのよ、本当に。



「フフフ..本当に無作法を謝りに来ただけですよ。そのついでに貴方の素敵なオッドアイを拝見に来ました」


と私の瞳を覗き込んだ。 



あの時、あの男に見られてたのね。


それでこの人が偵察に来たって訳ねぇ。


私なんかをわざわざ見る来るなんて暇人。




「そうですか」


もうなんか、話すの面倒臭い。


と彼との会話に飽きてきた頃、


「お待たせいたしました」


たいちゃんが注文した物を運んできてくれた。


おぉ、ナイス。



「ありがとうございます。さぁ、召し上がってください。迷惑料にご馳走しますよ」


たいちゃんに微笑んでから、私を見た大木さん。



「じゃ遠慮なくいただきます」


彼に手を合わせて、出来立てのパンケーキを食べ始めた。


ん、美味しい。


うちの店って、料理のレベル高いんだよね。


賄いを食べながら、いっつも思ってた。





「これから楽しくなりそうですね」


そう言うと眼鏡の奥の瞳を三日月にして珈琲カップを口に運ぶ大木さん。



嫌な予感しかしない。



「大木さん、私は貴方方と馴れ合うつもりはないですよ?」


そう返して、ハチミツたっぷりのパンケーキを口に頬張る。



「大木さんだなんて他人行儀な。美智瑠と呼んでくださって結構ですよ」


「いやいや、他人ですよね?」


この人なんなんだ?


怪訝そうに美智瑠さんを盗み見た。

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