第77話

「アハハ...貴方の中では紅葉は完全に変態に分類されたんですね?」


この人、自棄に楽しそうだ。



「あれを見せられたら普通そうなりますよね?」


「まぁ、否定はしません。ですが、貴方も全く動じなかったと伺ってますが?」


何を考えているのか分からない瞳で私を見据えた後、眼鏡のフレームを指で押し上げた。



「...反応するのがバカらしかっただけですよ。貴方も彼の知り合いならば忠告はした方がいいんじゃないですか?」


変態に磨きがかかる前にね?



「あ、そうでした。自己紹介がまだでしたね?」


「えっ?」


このタイミングで?


別に知りたくないし。


イケメンには違いないけど、あまりかかわり合いになりたくないタイプだもん。



「まぁ、そんな嫌そうな顔しなくても良いですよ。取って食おうと言うわけじゃありませんし」


「.....」


あぁ、この人益々胡散臭い。



「中尊寺コーポレーション取締役専務、大木美智瑠です。宜しくお願いします」


「あ...はぁ。北川暁です」


名乗られたら名乗るしかない。


興味ないのになぁ。



「暁さんは本当に我々に興味ないのですね?」


と言われ、


「はぁ、まぁ。ありませんね」


と面倒臭そうに返す。



本気で面倒臭いから。



って言うか、何しに来たの?ほんとにさ。





「男装していたのはどうしてですか?こんなに美しいのに」


どうして私にこんなにも興味持つのかなぁ?



「あ、別に大したことじゃないですよ。夜の繁華街は危ないからキャップを被って顔を隠してただけです」


「そうですか。ですが、先日は追われていましたよね?」


と鋭い目を向けられた。



ああ、この街に来た日に見られてたのね。



「...っまぁ」    


隠しても仕方ないし。


この人、あいつらの知り合い?



「ああ、何も心配入りませんよ。あのクズどもはこちらで処分しておきましたから、もうこの街に来ることは無いでしょう」


そう言った大木さんはとても残忍な瞳で微笑んだ。



ゾクッと背筋が寒くなる。


この人は本物だと私の防衛本能が訴えてくる。


何者なの?この人。


警戒色が瞳に宿る。

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