第76話

「店内の隅借りて良いですか?」


インテリ眼鏡と何処かに行くつもりはないから、売り上げに貢献しよう。



カウンター越しに厨房の颯斗さんに聞いた。




「おう、良いぞ」


と微笑んでくれたので、インテリ眼鏡に視線を戻す。



「じゃ、そこの隅で良いですか?」


店の一番奥の二人席を指差した。


周りには他のお客も居ないし良いよね?



「ええ、結構です」


うわぁ、胡散臭い笑い方。



インテリ眼鏡に背を向けて溜め息をついてから、奥に向かって歩き出す。


背後から聞こえる足音。



一番奥の席に座る。


するとインテリ眼鏡も対面に腰掛けた。



「何か注文しましょうか?」


と言われたので、


「はい、ぜひ」


と答える。



「前沢君」


インテリ眼鏡が手を上げて、たいちゃんを呼んだ。



「はい、なんですか?大木さん」


駆け寄ってくるたいちゃん。


この人は大木って言うのね?


まぁ、どうでもいいけど。


と対面の彼を見た。



「注文良いですか?」


「ええ、もちろんですよ」


「暁さんは何にしますか?好きな物をどうぞ。俺はアメリカンを」


私を見てからたいちゃんに注文したインテリ眼鏡。



「じゃ私はパンケーキセットで。飲み物はホットミクルティーで宜しく」


「おう、了解。注文は以上でよろしいですか?」


注文伝票に書き込むとインテリ眼鏡を見たたいちゃん。



「ああ、それで頼む」


「少々お待ちください」


一礼して去っていくたいちゃん。



彼の態度や言葉遣いからして、このインテリ眼鏡はそれなりの地位の人ってことね。



って言うか、何しに来た?


あの変態野郎の仲間だもんね、油断できないわ。



とっとと話を終わらせて帰って貰おう。



「で、なんですか?あの人の性癖をとやかく言うつもりはないですよ?露出狂の変態に構おうとも思ってません」


口止めに来たんだろうし。



小声で話した私に対して、


「...ブハッ...あいつ、すでにそんな位置付けなんですか?」


となぜか吹き出した。


いやいや...その反応可笑しくないか?



「位置付けも何も、元から関心すらありませんよ」


だから、今後は構ってくるな!と言いたい。



「ほんと、今日は無作法な真似をしてすみませんでした」


「いや、別に謝って欲しい訳じゃないし。ほら、人にはそれぞれ性癖って有りますしね」


彼は彼で人に見られて興奮するんだろうし。

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