第68話

紅葉のシャワーを浴びる音が聞こえてきたのを確認して、スマホを取り出した。



「もしもし、俺です。ゴミの処分をお願いします」


『直ぐに向かいます』


短い電話、それで用件は済む。



5分もしないうちにこの部屋のチャイムが鳴る。


俺は相手も確認せずにロックを解除する。



「お疲れさまです」


と入ってきた数人の強面の男達は俺に一礼をして奥の部屋へと入っていく。



俺はデスクに置かれたPCを操作しながら、アメリカの相場を確認する。


東証はもう終わってますからね。



明日はこの辺りから攻めるか。


幾つかの目星をつける。


株トレーダーは小まめに確認をしなきゃ務まらないんだ。


これも俺の仕事の一つですからね。




少しして奥の部屋のドアが開く。


PCから顔を上げると、簡単に服を着せられた女が男に担がれて出てきた。


まだ気絶してるんですか?


紅葉はどんな抱き方をしたんでしょうね。



あの子を追い掛けようとラストスパートを急いだんでしょうが...ククク面白い。



「部屋のベッドメイキングも終わりました」


黒いシーツを抱えた男が俺を見た。



「ご苦労様です。何時ものようにその女は好きにしていいですよ」


「ありがとうございます」


紅葉の容姿と地位に目の眩んだ女は性欲処理の道具に使われた後、風呂に沈められるか下の連中に下げ渡される。


媚びへつらって紅葉の女と言う立場にのしあがろうと画策した罰だ。


それに紅葉は一度抱いた女は抱かないですから、もう用済なんですよね。 




頭を下げて部屋を出ていこうとする男達に声をかける。



「...ああ。もしかすると処理する女はそのうち居なくなるかも知れませんよ」


俺は楽しげに予告を告げる。



「「「えっ?」」」


驚いた顔の男達に、



「ま、あくまでも俺の予想ですがね」


と眼鏡のフレームをクイッと押し上げた。



「それはそうと、まだご飯を食べ終わって無かったみたいですが。中尊寺さんの体調悪いんですか?」


と一人が口にした疑問に、


「いいえ。イレギュラーが起こっただけなので心配要りませんよ」


と笑みを張り付けた。



「イレギュラー?」


「ええ、イレギュラーです」


とても楽しいね。



さぁ、もう帰ってくださいね。


俺はこれから楽しいことを画策しないといけないんです。



俺の無言の圧力に腑に落ちない顔をしたまま男達は部屋を出ていく。



こんな楽しいことそうそう教えてあげませんよ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る