第67話

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「捕獲しますか?」


スラックスのパンツだけを履いた紅葉に声をかける。


体が汗で滲んでるのは、直前までの行為のせいだろう。


性欲処理だけに女を抱くこいつは、抱いた後に直ぐ食事を欲しがる。


性欲と食欲は同じだと誰かが言ってた様な気もする。




「いや...良い」


そう言いながら彼女の出てったドアを見据える紅葉。



「そうですか?あの店員、まさか女性だったとは...」


あの店は男性店員ばかりだと思っていたのですがね。



「...ああ。俺もあいつの瞳を見るまで分からなかった」


ゆっくりと俺へと視線を向けた。



「女性ならばこちらで受け取るべきでしたね。他人の情事なんて衝撃的だったでしょうに」


俺は彼女を憐れに思った。



いつもの店員なら涼しい顔で配達して、涼しい顔で戻っていくのに。


女性ならばかなりショックを受けたかも知れませんね。




「ククク...あいつ動揺を見せなかった。俺達の行為なんて我関せずな顔して料理を置いていきやがった」


紅葉の口調は自棄に楽しそうだ。


そう、捜していた玩具を見つけた子供のように。



.....はぁ、悪い癖が出たんじゃなければいいんですが。


あの店の店員に手を出す事は許されてない。


この街の暗黙の了解だ。




「遊びで手を出せる相手じゃありませんよ」


ここは一つに釘を刺しておく。



今、奥の部屋で気を失ってるアバズレとは違うんですから。


それに先程出ていった彼女の纏う空気は簡単にこちら側には靡くようなモノでも有りませんでしたしね。




「...ああ。でも、あのオッドアイは忘れらんねぇかもな」


紅葉らしからぬ言葉にギョッと目を見開いた。



何にも執着せずにその場限りの付き合いをしてきた紅葉が、忘れられないって.....。


今日初めて見た女だぞ?



って言うか...あの子、オッドアイなのか?


ドアが閉まる前に見えた長い黒髪。


どこかで見たような気がしたんでよね。




「シャワーを浴びる。部屋の女を処分しとけ」


非情な言葉を残して紅葉はバスルームへと消えて行く。



「了解しました」



女は性欲処理のただの道具。


だからこそ、処分なんて言葉が出てくる。


非情で怖い男、それが中尊寺紅葉。


誰もが恐れるこの街の支配者だ。



そんな男が興味を持ってかれた女。



ますます彼女に興味が沸いてきましたよ。


俺はクスッと口元を緩めた。

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