第58話

 ̄ ̄ ̄ ̄

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄




le lacrime di la dea(レ ラクリメ デイ ラ デア)に新しい仲間が増えた。


北川暁ちゃん、とても綺麗で落ち着いた女の子。



オーナーシェフの恵美ちゃんを除いて男ばっかりだった職場に一輪のバラが咲いた。



あ、クサイ台詞!と思った人、手を上げて。



本当に彼女は赤々と咲き誇る薔薇だと思う。


綺麗だと思って簡単に手を伸ばせば、鋭い棘で刺されて退却を余儀無くされるんだ。



暁ちゃんが来て10日の間にそれを発見した俺。



真面目で丁寧な仕事をする彼女。


暁ちゃんは開店から20時頃までしか居ないので、一緒に働けるのは数時間だけど、彼女の仕事っぷりは完璧だ。


俺も他の三人もそれは認めてる。



そして、今で俺達の顔だけで媚を売ってきた女達とは違い、彼女はいつもドライに俺達に接する。


それがまた心地良い。


決して俺はMではない。



だけど、暁ちゃんのクールは堪んない。



で、話は戻るけど。


暁ちゃんは見た目かなり極上だから、落とそうと声をかける男の客も少なくない。


初めは愛想笑いで対応する彼女だけど、我慢がならなくなると鋭い棘でチクリと相手を射す。


絶対零度の瞳だったり、一撃の言葉だったり、相手によってそれは変わるけど。



暁ちゃんは綺麗なだけじゃなく、自分の身を守る鋭い棘もしっかりと隠し持ってるんだよな。



遇の音も出なくなった男達は両手を上げて白旗を振る。


だけど、そいつらは来なくなるんじゃなくて隠れファンとしてうちの店に通い出すんだ。



有る意味凄いだろ?



暁ちゃんは...彼女は本当に不思議な魅力を持つ女の子だよ。



どんな理由でオーナーに拾われて来たのかは知らないけど、カフェの二階に間借りさせて側に置いてるぐらい恵美ちゃんは彼女を気に入ってる。



女も男も、暁ちゃんに囚われてしまうのかもな?





客足の止まった店内、カウンターに頬杖をついて、テーブルを拭く暁ちゃんをぼんやりと見つめていた。



「...紘君、なに見てるの?さっさと動いてくれない?」


敬語の取れた暁ちゃんはツンデレ真っ盛り。



「あ...ごめんごめん」


「謝るならさっさと動いて」


俺を一瞥すると作業を再開させた暁ちゃん。



今日も彼女は絶好調らしい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る