第52話

忙がしさのピークが過ぎたのが20時過ぎ。


人足が緩やかになり、厨房も店内も一息ついた。



この店は17時間~20時の3時間ピークらしい。




「やったぁ~ピーク過ぎたぁ」


と拳を天井に付き出して叫ぶ恵美ちゃん。



恵美ちゃん...まだお客さん店内に残ってるから。


苦笑いで恵美ちゃんを見たら、ニカッと微笑まれた。


恵美ちゃんはお店でも自由人らしい。



「お疲れさまでした」


と言ったら、


「暁ちゃんのお陰で助かったぁ。即戦力で嬉しいよぉ」


と抱き着かれた。



「へっ?あ、あの...」


アタフタしてる私の耳に届いたのは、


「恵美ちゃん、彼女困ってるから」


とハスキーな声。


カウンターに頬杖をついてこちらを見るイケメンが居た。



「抱き付いてないで、紹介してよ」


トレーを手にしたこれまたイケメンがやって来る。



あれよあれよと、後の二人もやって来てイケメンが4人カウンターに揃った。



うわぉ!この店はイケメンしか雇ってないのね。


4人も揃うと圧巻だ。



「えぇ~紹介するの勿体無いなぁ」


と私を隠そうとする恵美ちゃん。


だけど、私の方が身長高いので全く隠れません。



「意地悪しないで、オッドアイの美人さん紹介してよ」


後から来た二人のうちの一人がわたしを見てウインクする。


イケメンはウインクが似合う。


嫌みに見えないから凄いなぁ。



「仕方ないわね。これから一緒に働くし紹介するわよ」


ね?暁ちゃんと私を解放してくれた恵美ちゃん。



「はい。お願いします」


ここで頑張るつもりだもん。



「皆、彼女は今日から働く北川暁ちゃん。厨房とフロアーを兼任してもらいます。仲良くしてね」


と私を前へと押し出した恵美ちゃん。



「よろしくお願いします」


カウンターに向かって頭を下げた。



「「「「よろしく」」」」


陽気な返事が聞こえた。



「皆、良い子達だからね、色々と教えてもらってね。左から前沢大河(マエザワタイガ)」


と恵美ちゃんの言うと金髪でサーファーポイ男の子が一歩前に出た。



「皆にはたいちゃんて呼ばれてます、よろしく」


と一重の大きな瞳を三日月にして人懐っこい笑みを浮かべた。

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