第51話

恵美ちゃんが入っていったカフェの裏口からお店へと入る。


するとそこは少し薄暗い荷物倉庫になっていて、そこを抜けると厨房の裏手に出た。


忙しなく動き回る恵美ちゃんが目に飛び込んで来る。


一人で厨房を切り盛りしていて凄く大変そうだ。



夕方の五時頃は忙しい時間帯なんだろうなぁ。


申し訳無い気持ちになりながらも、声をかける。


だって、このままここにいても仕方ないしね。


手伝うことが出来れば即戦力にもなれるかもしれないし。



「恵美ちゃん」


ここに来て、初めて彼女の名前を呼んだ気がする。



「えっ?」


も驚いた声を出して手を止めた恵美ちゃんは、こちらを振り返って私を見つけると嬉しそうに破顔した。


「いや~ん、暁ちゃんがやっと名前を呼んでくれたぁ」


あ、やっぱり初めてだったんだね。



恵美ちゃんは忙しくても恵美ちゃんだった。



「今日からよろしくお願いします。何か手伝える事は有りますか?」


一礼してから恵美ちゃんに目を向ける。



「こちらこそよろしくね。早速だけど料理は出来る?」


「はい。カフェで出るものなら」


漁師町のカフェのおばさん達に色々と仕込んで貰ったからね。



「やった!即戦力」


嬉しそうにガッツボーズをする恵美ちゃん。



「あ、でも。こちらとは味が違うかも」


「あ~だね。じゃ、味は追い追い覚えてもらうとして、今日は私のアシストをお願いできるかな?」


「はい」


「うん。良い返事。スタッフの紹介はこのピークが終わってからね」


「分かりました」


「じゃあ、そこで腕と手を洗ってその消毒液で消毒したらこっちに来てね」


恵美ちゃんが指差した手洗い場に急いで移動した。



袖を捲って二の腕の所でボタンで止めると七分になる袖。


手荒い用のタワシを使って指先まできれいに洗う。


肘から下まで洗うと清潔なタオルで拭いて、消毒液を手に塗りつけた。




「準備できました」


忙しく動いてる恵美ちゃんの元へ駆け寄った。



「じゃあ。そこのお皿を6枚並べて付け野菜を並べていってくれる?今日の付け野菜はポテトサラダ、胡瓜、レタス、プチトマトよ」


「はい、了解しました」


指示通りに動きだす。


盛り付け方は料理を出すカウンターに置かれてたメニューを盗み見た。


そこからは怒濤のように時間は進んだ。



賑わう店内、通る声。


恵美ちゃんの言ってた男の子達4人が所せましと、店内を動き回っていた。


私も恵美ちゃんの料理を作るスピードに合わせながら、時々味の確認もさせて貰った。



出来るだけ、一日でも早くここの味を出せるようになりたいもん。

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