第46話
極たまに居るんだ、バカが。
ま、この目立つ相棒を奪うバカが出てこないことを祈ろう。
バイクを奥の建物よりに停めて、荷物を両手に持つ。
ヘルメットは後で回収に来よう。
「こっちだよ」
と手招きしてくれる恵美ちゃんに駆け寄った。
「二階から上はこの階段を使うんだ」
店の裏口の隣にあるドアを押し開けるとそこには上に登る階段が有って、恵美ちゃんはそこを登っていく。
一人が通れるほどの細い階段を上がると両側にドアが現れた。
「こっちが私の住居。だから、暁ちゃんはこっちね」
鍵の束をポケットから取り出した恵美ちゃんは、えっとぉと言いながら一つの鍵を選ぶとドアの鍵穴に差し込んだ。
鍵を回すとカチリと音がした。
押し開けたドア、そこには広い空間が広がっていた。
「12畳の1LDK、バストトイレ付き、あっ狭いけどロフトも在るわよ。どう?何もないけど、暁ちゃんの好きなように使ってくれて良いわ。社宅扱いなので家賃は要らない」
と部屋に入りながら教えてくれる恵美ちゃん。
「十分すぎます。こんなに良い所なのに家賃は要らないなんて悪いです」
申し訳ないよ。
こんな良い部屋、無料だなんて。
「良いのよ。元々私の部屋と繋がってたのを二つに切り離しただけの余ってる部屋だし。暁ちゃんが使ってくれた方が良いのよ」
なんて振り返って微笑んだ恵美ちゃんに、
「ありがとうございます。お言葉に甘えてご厄介になります」
と頭を下げた。
「あ~もう、他人行儀な。暁ちゃんは今日から私の妹だからね。そのつもりで」
と人差し指を指され、
「...フフフ、分かりました」
と頷いた。
この人と漫喫で会えたことを本当に良かったと思う。
会ったばかりの私にこんな風に親切にしてくれて、仕事も住む場所も与えてくれたんだもん。
「よし、この部屋の物を揃えなきゃね。布団はうちにあるから家具と電化製品ね」
う~ん、どうしようか?と腕組みして頭を捻った恵美ちゃん。
「この辺り、散歩がてらに買いに行ってきます」
相棒と一緒に出掛けようと思う。
この辺の地理も少し頭に入れておかないとね。
「そう?一緒に行かなくて大丈夫?」
そんな不安そうな顔しないでくださいよ。
ほんと、恵美ちゃんは人が良すぎる。
「はい。なので、仕事は夕方からでも良いですか?」
今からだと13時までには終わりそうにないし。
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