第45話
「ジャジャ~ン、ここで~すぅ」
バイクから降りるとヘルメットを脱いでヘラリと笑った恵美ちゃん。
エンジンを止めてバイクを停める。
恵美ちゃんに誘導されるままに到着した路地裏。
昨日通った繁華街の大きな通りの一本裏に入った場所に、恵美ちゃんのお店は佇んでいた。
夜の店が入るビルが建ち並ぶ若干怪しげな地域。
だけど、恵美ちゃんのお店は綺麗なレンガ造りの建物で、道沿いに面した大きなウィンドウが清潔な店内を照らし出していた。
「素敵なお店ですね?」
愛らしい店の入り口の上部に取り付けられた緑の看板にはle lacrime di la dea(レ ラクリメ デイ ラ デア)の文字。
「ありがとう。これからは暁ちゃんもここで働くのよ。はいこれ」
と言われて受け取ったヘルメットと荷物とクマ。
「あ、すみません」
ヘルメットをハンドルに引っ掻けてバイクを降りた。
荷物をタンデムに置いて、店の前に立った。
今日からここが私の居場所になるんだ。
胸の奥から熱い何かが沸いてきた。
「あ、昨日、ブラインド降ろすの忘れてたわ」
綺麗に磨かれた窓から店内を見ながらボソッと言った恵美ちゃん。
そ、それで良いんですか?
彼女はしっかりしてそうで、どうやらうっかりさんなのかも知れない。
「...大丈夫なんですか?」
一応聞いてみる。
「あ~うん、問題ない。店のオープンまでは時間があるから部屋に案内するね。こっちよ」
「...あ、はい。あのバイクはどうしたら」
愛車を置いてけない。
「あ、バイクも一緒に行こう。店の裏に駐輪場があるから」
そう言いながら店と隣のビルの間の細い道へと入っていく恵美ちゃん。
「はい」
頷いて、ハンドルに掛けていたヘルメットをホルダーにセットして、ハンドルを両手で握るとスタンドを外してバイクをゆっくりと押して彼女の後を追った。
建物の切れ目まで行くと店側に曲がる。
そこには塀で囲まれた空き地が有って、恵美ちゃんが言った通り店の裏口が有った。
「バイクは適当に停めていいよ。ここの入り口に防犯カメラも設置してあるから盗まれる事はないと思うし」
「あ、はい」
砂利の空き地だけど、防犯には優れてそうだ。
高い塀と防犯カメラには驚いた。
「この辺ね、やっぱり治安は良くないから。極たま~にバカが居んのよ」
バイクを掴んだまま空き地を見渡していた私に恵美ちゃんが言う。
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