第38話

カラオケボックスみたいな操作キーで、注文を済ませる。


ドリンクは中央の所でバー形式になってるので、自分で取りに行かなきゃならないらしい。


飲み放題だから、それはそれで仕方ないと納得する。



注文した料理が届くまでにドリンクは取りに行った。


別段、人とは擦れ違わなかった。



仕切りだけで区切られた部屋や個室には人が居たけれど、皆、漫画を選ぶ時以外はブラブラしないみたいだ。



もちろん、漫画の陳列の場所には色んな人が居たけど。



時間帯も時間帯なので、未成年者は居ないようだ。


年齢を誤魔化せて良かったとホッとする。



実は受付と男の子がおまけしてくれたんだけどね?


これはナイショ。


大荷物を持って、こんな夜にここを訪れた事を考慮してくれたんだと思う。




借りた個室に戻って暫くすると、注文したハムサンドが運ばれてきた。



それを頬張りながら、今日の事を色々考えた。




なんだか、色んな事が一日で起こったよね。


本当、忙しい一日だった。



蛇鬼とのくだらない追いかけっこも疲れたし。


バイクテクニックないくせに、本当しぶとかったなぁ。



この街に入った辺りまでは着いてきてたと思うけど。


そのうち、あいつらのバイクの音は消えたからね。



あんなムッさいバイクで我が物顔で走ってて、ここの帝王様の怒りでも買ったのかしらね?


ま、私にはどうでも良いことだけど。


それならそれで、帝王様には感謝だね。


クズの排除してくれて助かったし。



見たこともない帝王様に感謝した。


まぁ、会うこともないだろうけどねぇ。




喫茶店のおばさん達には悪いことしたなぁ。


急に辞めたりして迷惑かけちゃったよ。




病院の帰りに、事情を全て打ち明けて辞めさせて欲しいとお願いした。


『そんな事なら気をつかなくて良いから、逃げなさい』


そう言ってくれたけどさ。



あの喫茶店居心地が良かったんだよね。


おばさんもおじさんもイイ人だったし。


出来たらもっと居たかったなぁ。



それもこれも、伯母さんと泉のせいだわ。


いつか、あの二人はギャフンと言わせてやる。



やられっぱなしは性に合わないのよ。


冗談じゃないわ。



力をつけて必ずあの二人を見返してやる。



掴んでいたハムサンドが力を入れすぎてグシャッとなった。



「あら、嫌だ」


慌てて口に放り込んで、マヨネーズのついた二本指をペロリと舐めた。

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