第37話

「ん~ぁ~肩凝ったぁ」


右手を左肩に乗せて首をグリグリ動かした。


長時間のリュックはキツい。



ま、色々とキツかったよね?


ホッと溜め息を漏らしてリクライニングシートに腰を降ろした。



壁が薄いので、近くの部屋の音が時々漏れ聞こえるけど、大して気にはならなそうだ。


鍵も掛かる個室だから、機密性を良くしちゃうと良からぬ事に使っちゃう人達が居るから、この薄さなんだろうと思うしね。


寝る時は備え付けのヘッドホンをすれば、好きな音楽を聞きながら眠れそうだ。



到着したばかりの夜にはもってこいの宿だと思う。



これからこの街で暮らすには色々と物入りだし、ホテルなんて贅沢なこともしてらんないしね。



しかし、良く私みたいな格好の人間を利用させてくれたよね?



見た目怪しいのに、漫喫の利用者ってこんなに荷物持ってても怪しまれないんだなぁ。



今時の若い子は、ホテルがわりに利用してるって前に雑誌で読んだけど、本当にそうなんだと思う。



さっきの受付の男の子は変な顔一つしなかったもんね。



今日の私みたいに荷物を提げた子がよく来るって事だよね。



まぁ、詮索されなかったのは有りがたいけどさ。




「分析してないで、シャワーでも浴びよう」


ドアに鍵を掛けたことを再度確認して、鞄の中から着替えとタオルを出すとシャワー室へ向かった。



狭いシャワー室だったけど、一夜過ごすには何の問題もない。



温かいお湯が出て、備え付けのシャンプーやなんかも有ったし、十分すぎかもね。



手早くシャンプーを浴びて部屋に戻った。



濡れた髪をタオルドライしながら、リクライニングシートに座る。


壁に掛けられてた軽食のメニューを手に持って何を食べようか物色する。



何かお腹に入れとかなきゃね。


時間が時間だから、ガッツリは要らないけど。

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