第36話

追っ手に捕まることなく、到着した大きな街。



繁華街のメイン通りを通り抜けて、一軒の漫画喫茶に辿り着いた。


どうしてここを選んだのか?って言うと、駐輪場が地下になっていたから。



万が一、あのバカ達が追い掛けてきて見つかっても困るからバイクを隠したかったんだよね。



この街ではあんな田舎者の余所者が大きな顔してうろつけるとも思わないけど。


念には念を入れておきたかったんだよね。




ブオンと一度ふかしてから、地下へのスロープを降りていく。


駐輪場のマークを探して、その場所に愛車を移動した。



再度スタンドを足で引っかけて出すとバイクを斜めに停める。


エンジンを切って、ヘルメットを脱ぐ。



「あ~ぁ、体が痛い」


ハンドルにヘルメットを引っかけて、両手を伸ばして伸びをした。


バイクに乗る姿勢って長時間は辛いのよね。


信号で停まる度に体を伸ばすけど気休めにしかなんないし。



「しかも、髪の毛バサバサじゃん」


あの時、急いでヘルメットを被ったから、髪の毛直してなかった。


あいつらのせいだ。


ほんと、ムカつく連中だわ。



櫛通りの悪くなった髪に手櫛を入れたが上手く通らない。



漫喫で朝まで過ごして、明日の朝から住む所を探そう。



バイクから降りて、ヘルメットをヘルメットホルダーに着けてロックをかける。


バイクのキーロックにもしっかりと防犯を作動させた。



流石に荷物は持ってくしかないか?


ネットで縛り付けてあった荷物を手に持つと、地上へ向かうエレベーターに乗り込んだ。


こじんまりとしたエレベーターの内部は、色んなキャンペーンのお知らせが所せましと張られていた。



個室ならシャワーと大型のリクライニングシートも有るんだね。


「おっ、これ良いじゃん。軽食もあるみたいだし、朝まで過ごせそうだ」


一枚のチラシを目に止めてウンウンと一人頷いた。




チン、軽い機械音が鳴りエレベーターが開くと、そこは漫喫の受け付けホールの正面だった。



私は大きな荷物を持ったまま受付を済ませると、鍵を貰った部屋へと移動した。



二畳ほどのスペースのど真ん中に置かれた大きなリクライニングシート。


奥には一つドアがあり、シャワールームだと思われる。


壁沿いのカウンターにクマを置いて、カウンターの下に荷物を置くと、背負っていたリュックを降ろした。

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