第26話

高校を卒業してまで、まだ暴走族やってるとか笑えるでしょ?


それに、姫ってなんなの?って思う。



私に迷惑が掛からないなら好きにやっててもらって良かったけどさ。


追いかけられちゃ堪んないのよ。



どうせ、泉の命令で私を捕獲しに来たんだろうけど...。


だいたいさ、追跡するのに族旗掲げちゃダメでしょ?



僕達、蛇鬼ですよぉ~と言ってる様なもんだし。



相変わらずバカの集まりね。




まだ遠くに見える十数台のバイクを尻目に、ゆっくりと地面を蹴りあげてアクセルを回す。



追い付かれたりしちゃ困るからね。


距離は近づけさせないよ。



もう少し行けば下り。


スピードも加速できる。


何度も通ったこの道は慣れてるからね。



バイクの免許を取って直ぐにここに来た事を思い出す。



何時も眠れない時には、この山道で遊んだから。


何度も往復したこの山は私のテリトリーだ。



だから、あんな暴走族なんかには追い付かれやしない。










登りを抜けて頂上に着いても、後方の集団のエンジン音は距離を縮められてない。



悪いけど、もう追い付けないよ?



相棒、行こう。



真紅のボディにタッチしてからハンドルをしっかりと握り締めた。


そして、坂を下りながらアクセルをあける。



速くなるスピード、曲がりくねった道を突き進む。



加速するタイヤの回転、唸るエンジン。



だけど、ブレーキは掴まない。


体を左右に揺らしながらカーブを越えていく。


地面すれすれに車体を倒して、上手くカーブを曲がりきる。



一瞬の油断が死を招く。


なのに、こんなにもドキドキと胸が高揚するのは何故だろう。


怖いのに、怖くない。



スピードとギリギリ状態に胸が沸く。



ああ、今の私は空を飛んでるみたいだ。



こんな時思うのは、自分が勝負師かもしれないって事を。



命を賭けたスピード勝負に、ワクワクして仕方ないんだ。


絶妙なブレーキとハンドル捌きで、ドンドン下っていく。



正面だけ見据えた私の耳には、相棒の唸り声しか聞こえない。




楽しい....楽しいね、相棒。



私の命は貴方に預けてるから、貴方の命も私に預けてね。



さぁ、行こう。



未来を作り出すために.....。



車体を建て直した瞬間、ブォン!とアクセルを吹かして唸り声を響かせた。



暗い暗い山道に、相棒のエンジン音がどこまでも響き渡っていた。

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