第25話
街を抜け西へとバイクを走らせていた。
夜だからか交通量は少ない。
すいすいと進むとバイクで、風を感じながら海岸線を行く。
このスピードなら3時間も走れば目的の街へとたどり着けそうだ。
海岸線を抜けその先の峠を越えれば、西の大きな街が見えてくるはずだ。
慌てる旅でも無いので、のんびり干渉に浸りながら懐かしい景色を目に焼き付けていた。
パパとママと三人で暮らしていたログハウス。
良く遊びに来た船着き場。
漁師のおじさん達が集まる漁業組合の小さなビル。
その近くには魚を水揚げする浜。
何もない町だけど、住みやすかったとは思う。
パパが亡くなるまでは、田舎暮らしも捨てたもんじゃ無かったしね。
19年暮らしてきた土地ともさようならだね?
暗くて見えないけどもうすぐパパが眠る丘が見えてくるはず。
パパ、ママを頼むね?
私が迎えに行くまで見守っててよ。
一瞬だけ左側の丘へと目を向けた。
それから正面に視線を戻して、アクセルを唸らせた。
ボンボンボボ~ン。
お腹に響く様な重低音を周囲に響き渡らせた。
真っ暗な道は愛車のライトだけが道を浮かび上がらせてる。
この先に未来が待っていると期待して、私は道をひた走る。
自分のバイクのエンジンに混じって鈍いエンジン音が聞こえてくる事に気付いたのは、海岸線を走り抜けて山道に差し掛かった時だった。
バイク?それもこの音は一台じゃない。
ミラー越しに背後を確認するも、まだ視界に捉えられる距離には近付いては居なくて。
なんだろうか?と思いながら、左右に蛇行する山道を行く。
舗装されていても、左右に曲がりくねった登りは上手くスピードを保てない。
何度目かのカーブを曲がって停車した。
やっぱり背後からの鈍い音が気になったから。
頂上に近いそこからは、私の登ってきた道が一望できた。
そして、見えたのは複数のバイクのライト。
何台も続く光に眉を潜めた。
蛇鬼(ダキ)...あんな気味悪いバイクの改造をしてるのは、アイツらしかいない。
漁師町のクズ集団、いわゆる暴走族と呼ばれる連中だ。
「...チッ..」
苛立たしく舌打ちをするも、ヘルメットの中じゃ上手く鳴らない。
あいつらは追っ手だ。
それがどうして分かるのかと言うと、彼らは泉の知り合いだから。
質の悪い連中と繋がりのあった泉は、気がついたらあの暴走族の頭と付き合ってて、蛇姫なんて呼ばれてた。
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