第21話
 ̄ ̄ ̄ ̄
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
車を運転する私を気にすること無く、妻と娘は後部座席で着飾った自分達を鏡で見ている。
人を見下し自分達を磨くことしか考えていないこの二人は、自分達の為ならば身内さえも売り渡そうとする。
会社が傾いた時に、金銭的にお世話になった稜さんにも酷い罵倒を繰り返し、その娘である暁ちゃんも家政婦みたいに扱って来た。
この二人には人として優しい心が欠落してる。
本当にどうしようもない奴らだ。
だけど、この二人を捨てられないのは愛情が残っているからだろうか?
今ではそれすらも分からない。
今回の事も、早く知る事が出来たから対処できたが...。
そうじゃなかったら..と思うと怖い。
あんな良い子を屈辱し、貝塚に引き渡そうとするなんて。
暁ちゃんが、どうか逃げ切ってくれます様に。
願わずにはいられない。
稜さんと暁ちゃんには幸せになってもらいたい。
妻も娘も止めることが出来ない不甲斐ない私が願うなんておこがましいことだけどね。
それでも、どうか二人の計画を潰せます様に。
ハンドルを握る両手に力を込めた。
田舎ならではの暗い道を走る。
もう少し走れば東へ向かう道へと行ける。
そうすれば、西に向かう暁ちゃんを妻達に見つからずに逃がすことが出来る。
彼女も今頃家を出ているだろう。
最後まで何一つしてあげられなかったから、逃げ出す手助けぐらいしてあげたかった。
泉達の仲間も連絡がない限り動くことはないだろうし、今なら安全に逃げられるはずだ。
チラリとバックミラー越しに後部座席の二人を見る。
鏡をしまった二人は、話に夢中だ
しめしめこれなら大丈夫だ。
俺は少し気分が良くなった。
自分の計画通りに事が運んでいたから。
だけど、それは直ぐに脅かされる事になる。
泉の一言で......。
「ああっ!パパ止まってぇ」
突然の叫び声にブレーキを踏んだ。
キキーッと鳴るタイヤ。
後続車が居なかった事にホッと胸を撫で下ろす。
「な、なんだ?」
道路の脇に車を移動させて振り返った。
「スマホ忘れちゃったから戻ってよ」
あっけらかんと言い放った泉はまったく悪気はない。
ネイルを施した指でクルクル巻いた自分の髪を弄りながらこちらを見ていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます