第20話
バイクのタンデムにクマと鞄をくくりつけた。
それから、ヘルメットを被ってハンドルを握ると車庫からバイクを押し出して跨がる。
エンジンキーを回すといつもの心地良い重低音がお腹に響く。
今日は少し長距離を走ることになる。
帰りがけにガソリンは入れておいたから、準備万端だよね?
しっかり走って頂戴よ。
ポンポンとボディを叩いてお願いする。
相棒と二人でこの町を出る。
遠く離れた西を目指すために。
そこに何が待っているのか分からないけど...。
それでも私はそこへと向かうしかない。
ママの為にも、こうやって逃げ出すチャンスをくれた伯父さんの為にも。
漆黒の帝王が住む街。
噂には聞いたことはあるけど、どんな人なのか?どんな場所なのか?分かんない。
だけど、そこに希望があると信じて向かう。
ここにいて、ヒヒジジイの玩具になるよりマシなのは間違いないんだから。
バイザーを下ろしてアクセルをあける。
ゆっくりと動き出したバイクはすっかりと暗くなった町へと踏み出した。
クラッチを足で操作して速度を上げて、メイン道路を真っ直ぐに駆け抜けていく。
胸がざわめくのは両極端の思いが存在するから。
まだ見ぬ世界への不安と期待。
私はなんとしても、帝王の街に辿り着く。
そしてそこで根を張るんだ。
ママを迎え入れる為に。
この時の私は何も知らずにいた。
向かう先に、運命の出会いが待っている事も、自分が見たこともない世界に踏み入ることになるって事も。
この出発が私の全てを変えることになるんだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます