第15話
「暁ちゃん、そう思うなら今夜中にこの町を出るんだ。でなければ、君は明日には無理矢理貝塚に引き渡される」
伯父さんの言葉は重いものだった。
「...えっ?そんなこと..」
ママを残してこの町を出るなんて出来ないよ。
「ダメなんだ。そうしなきゃ」
いつも穏和な伯父さんのこんなに強い口調は初めてかも知れない。
「どういう事ですか?詳しく話してください」
ママの真剣な声に伯父さんは話し出す。
なんでも、忘れ物があって自宅に帰った時に、伯母さん達の悪巧みを聞いたのだとか。
泉の悪い仲間に私を拉致させ散々凌辱を与えた後に、貝塚に引き渡すと言うもの。
それが明日の午後だと言うこと。
私のアルバイトの通勤途中を狙うつもりなんでしょうね。
多勢に無勢...幾ら私でも大人数で来られたら逃げ切れない。
だから、この町から逃げろと伯父さんは言う。
でも、ママを置いてなんて....行けるわけないよ。
「そうなんですね...」
ママは溜め息を一つ漏らすと頭を垂れた。
「本当にすまない。止めるように言ったが聞く耳を持たないんだ...」
自分の力の無さに伯父さんには落胆が見える。
「良いんです。こうやって知らせてくれただけでも。暁、今夜この町を出なさい」
「そんな、ママ!ママを置いていけないよ」
ママの力強い言葉に、反論する私にママは意思を固めた瞳を向ける。
「ダメよ。貴女は今日ここを出ていく。私は入院してるから何も困ったことにはならないわ」
言い出したら聞かないこと分かってるよ。
だけど、会えなくなるなんてヤだよ。
「...ママ」
潤んだ瞳でママを見つめる。
「...バカね、一生会えなくなる訳じゃないでしょ。ほら、スマホだってあるんだから連絡は取れるじゃない。それに離れても私達が親子なのは変わらないのよ」
ママの手が伸びてきて私の頭を撫でた。
何も心配要らないと、そう告げるように何度も優しく撫でるママの小さな手に涙が漏れそうになった。
「...分かった。今夜ここを出る。落ち着ける街が見つかったら連絡するね」
何を言っても変わらないなら、ママの意思を受け入れるよ。
「うん、そうしてちょうだい。出来るだけ大きな街に行きなさい。そして紛れるように隠れなさい。珠子は執念深い所があるから」
ママはそう言うと困った様に眉を下げた。
分かったよ、ママ。
私はきっと逃げ切って見せる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます