第14話

「珠子とは...姉さんは昔から反りが合わないんですよ。今に始まった事じゃないです。泰二さんが心を傷める事はないですよ」


そう苦笑いするママの顔は複雑そうで。


伯母さんとの確執にママも心を痛めてるんだと分かる。




「珠子は本当に馬鹿者です。だけど、あれも色んな物を抱えてる。だからと言って何をしても許されるはずはありません」


優しい瞳でそう言う伯父さんは、あんな伯母さんでも愛してるんだね。



「...あの人も寂しい人なんです。昔はとても優しい姉だったもの」


ママは優しすぎるよ。


伯母さんには沢山嫌がらせされたのに。




「あれが心をいつか入れ替えてくれることを願います」


「そうですね。姉を宜しくお願いします」


ママは儚げに微笑む。




「もちろんですよ。連れ添ったのも縁です、最後まで面倒みます」


「ありがとう、泰二さん」



穏やかな空気が流れていた。


こんなにも優しい二人を困らせるなんて、伯母さんは本当に愚かだよ。




「珠子の事はここまでにして。ここに来た目的を聞いてもらえますか?」


伯父さんの表情がまた固くなる。



「ええ、聞かせてください」


ママはゆっくりと頷く。



ああ、もう隠すことなんて出来ないんだね。




「暁ちゃんも聞いたと思うが、珠子達は暁ちゃんを貝塚になんとしても引き渡そうとしてるんだ」


と私の顔を見た。



「.....」


ああ、ヤッパリか...と思った。



「貝塚って、地主の貝塚さんですか?」


ママは意味が分からないとばかりに首を傾げる。



「ええ、その貝塚です。彼は年甲斐もなく暁ちゃんを嫁に欲しいと珠子に持ち掛けました」


「はっ?」


...ママでもそんな間抜けな顔をする時があるんだね。


口開けすぎだから。



「うちの会社への投資と利便を図ることを条件に、暁ちゃんを差し出すように言ったらしいです。もちろん珠子は二つ返事で了承した。暁ちゃんを人身御供に差し出すつもりなんです」


なんてバカな事を...と伯父さんは眉をしかめた。



「暁を道具みたいに扱われては困ります。この子の意思を無視してそんなこと...」


ワナワナとママが唇を震わせる。



「ママ、大丈夫。私は伯母さん達の思惑通りにはさせないよ」


だから心配しないで、とママの手を握った。

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