第13話

泉にしても、伯母さんにしても、可笑しな事ばっかりしてる。


あの人達は僻みと妬み根性だけは、誰にも負けないけどね?


同じ血が流れてるのが信じられないぐらいにね。





「今日はどうなさったんですか?」


いつも以上に落ち着きがない伯父さんを見かねたママは確信に触れる。


伯母さん達の監視があるから、伯父さんが訪ねてくるなんて中々無いからね。



それに、この時間は会社に居るはずでしょ?




「す、すみません」


伯父さんは泣きそうな顔で、その場に土下座した。



「えっ?」


「はぁ?」


ママと私は突然の事に目を丸める。



なに?どう言うこと?




「本当に...本当に申し訳ない」


土下座してる伯父さんの声や肩が震えてる。


余程の事があるんだろうと推測できる。


やっぱりあの話なのかな?


だったら、ママには聞かせたくないかも。




「...伯父さん、あの...」


と言いかけた私に、



「頼む、暁ちゃん。今夜のうちに逃げてくれ」


と顔を上げた伯父さんの表情は真剣なモノで。



心臓がドキッと嫌な音を立てた。


私にとって良くない情報を彼は持ってきてくれたんだろう。


それはもちろん...私を助けるために。




「泰二伯父さん、話なら私が聞きますから、少し外で話せませんか?」


伯父さんの腕を取って立たせようとした。


ママには聞かせたくないから。


話は私だけが聞けば良い。



「...あ、暁ちゃん」


私に腕を引っ張りあげられた事で伯父さんは動揺しながらも、その場に立ち上がる。


お願いしますと伯父さんに目で訴える。




なのに...ママは抑揚のない声で言葉を紡いだ。



「泰二さん、聞かせてもらえますか?珠子がまた良くない企みをしてるんですね?」


「...ま、ママ」


顔を向けた時、ママは穏やかに私に微笑んだ。



「暁、私も話を聞かなきゃいけないわ。泰二さんがこれ程に動揺してる事ですもの。何も知らずになんていられないわ。大切な娘の事ですもの」


そんな風に言われたら何も言えないよ、ママ。



私は掴んでいた伯父さんの手を力無く離すと、下唇を噛みしめて俯いた。




「すまない、本当にすまない、稜(リョウ)さんや暁チャンには感謝しなきゃいけないはずなのに...。珠子達は君達を蔑ろにするばかりで...」


伯父さんは棒立ちのまま苦しそうにそう吐き出した。

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