第12話

「はい、どなたですか?」


入り口まで向かった私は、ママの代わりに返事をしてドアをスライドさせた。



するとそこには、くたびれた顔をした細身のおじさんが居て。



「...暁ちゃん」


申し訳なさそうに眉を下げて私の名前を呼んだ。



「泰二伯父さん」


そう、目の前に居るのは大森泰二(オオモリタイジ)。


泉の父で、あの伯母さんの旦那さんだ。


あの家に住む唯一の血の繋がらない人だけど、泉達とは比べ物にならないぐらい良い人だ。


婿養子に入って肩身の狭い思いをしてる伯父さんは、伯母さんには目に見えて逆らったり出来ないけれど、影ではコッソリと私達家族を心配してくれたりする。



もちろん、父のお金で会社を立て直した事にも恩義を感じてくれている。


伯母さん達の手前、私達に何もしてあげられないと心を痛めてくれてるみたいだ。



ま、仕事は出来ない人だけど、人柄は良い。




「まぁ、泰二さんがきてくださったの。入って貰いなさい」


ママの声に、


「分かった。泰二伯父さん入って」


と病室に招き入れた。



「失礼させてもらうね」


伯父さは遠慮がちに入ってくるとママのベッドまで歩いていく。



私はドアを閉めると、ママ達の元へと向かう。



神妙な面持ちをしてる伯父さんに凄く嫌な予感がした。



もしかして、伯母さんは更に何かを企んでるんだろうか?






「具合はどうですか?」


ママを本当に心配してくれてる。



「相変わらずなんですよ。ご迷惑ばかりかけてすみません」


とママは薄く笑う。



「いえいえ、迷惑なんて何も掛けられていないですよ。俺達の方が迷惑をかけている」


と困った顔になった伯父さん。


この人だけがあの家でまともな人だもんね。




「母の具合はどうですか?」


「お義母さんはリハビリを頑張ってくれてます」


実の娘の伯母さんがしなきゃいけないのに、お祖母ちゃんの面倒を見てるのは実質伯父さんだもんね。



「そうですか、ありがとうございます。母をよろしくお願いいたします」


ママは涙を目に溜めて頭を下げた。


本当はお祖母ちゃんの面倒を自分で見たいんだよね。


自分の体が思うように動かなくて歯痒いんだと思う。



ママの代わりに私が面倒見たいけど、伯母さんが頑なにそれを拒否してるんだよね。



ほんと、意味分かんないよね?


自分は何もしないくせにさ。

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