闇と光と

第42話

千里と二人で心配した通り、次の日も及川君は話しかけてきた。


休み時間に普通に自然な笑みを浮かべて。



「篠宮さん、テスト出来た?」


なに? 振られたのにその爽やかな笑顔は。


「別に」


机に頬杖をついて窓を見つめたまま返す。


机の前に立ってる及川君と、誰か連れ去って欲しい。



不満げに見てくる暇があるなら、連れに来い!


窓ガラスに映る私を睨んでる女子に、切実に願う。


もちろん、その願いは届く様相を見せない。



「僕、ちょっと、ヤバい課目あるんだよね」


「・・・・」


知らないわよ。


人の机に手をつくの止めてよ。



私達のやり取りを気にするようにクラスメートがチラチラと見てるのが分かる。


マジで有り得ない。



「あ~早くクラブ始まらないかな。あ、僕、サッカー部のなんだよ」


「・・・そう」


「勉強より、体動かしてぇ」


どうでもいいことを、話してくる及川君をなんとかして。



「及川君、悪いけど、私、響と話あるんだけど」


千里が助けに来てくれた。


ホッとすると同時に、ありがたい気持ちになった。



「そうなんだ。じゃあ、またね、篠宮さん」


気にするでもなく、私にヒラヒラと手を振って去っていった及川君。



「取りつかれちゃってるわね」


呆れ顔で去っていった及川君に視線を向けた千里。


「ほんと、いい迷惑」


顔を歪めて溜め息を漏らした。



「及川君、かなり心臓が強い人よね」


「鋼で出来てるんじゃないの?」


あんなに冷たくされても、笑って接してくるなんて。



「フフフ、それは言えてる」


「他人事だと思って笑ってないでよ」


「ごめんごめん、そんなつもりは無いけど」


「誰か、あれを止めてよ」


友達と楽しそうに会話をしてる及川君を見た。


及川君を小突いたりして、笑ってる同級生に私なんて止めろと言ってもらいたい。



「及川君が飽きるまで無理じゃないかしらね」


「あ~もう、勘弁してよ」


机に突っ伏して両手をだらりと前に放り出す。



「よしよし、出来るだけ助けるようにするから頑張って」


千里が私の頭をポンポンと叩いた所で、次のチャイムが鳴った。

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