第40話
「あいつ、本当、面倒くさい。断ったのに、私が睨まれるのおかしいでしょ」
眉を寄せてうざったいと周囲に視線を向けた。
今度は、視線を逸らす女と睨み返してくる女の二種類がいた。
「及川君、イケメンで優しいって人気あるのよね。それに、一年なのにサッカー部でレギュラーなんだって」
「千里、詳しいんだね」
「クラスの女子がよく話してるわよ」
「へぇ、そうなんだ」
「響ちゃんは、我関せずだものね。クラスメートの話なんて聞いてないか」
呆れた様に肩を竦めた千里。
何となく、千里の言葉に違和感を感じて、なんだろうか? と考える。
「・・・・・」
「どうかしたの? 響ちゃん」
急に黙り込んだ私の顔を心配そうに覗く千里に、
「あ! 分かった」
と声を上げた。
「えっ? ど、どうしたの」
真面目な顔で焦ってる千里が面白い。
「千里の話し方に違和感を感じてさ。考えたら分かったんだよ」
「え、どう言うこと?」
頭に? が浮かんでるであろう千里。
「千里って、お姉さん口調なのに、私の名前をちゃん付けで呼んでるから、なんだか微妙におかしかったんだよね」
「だって、最初から響ちゃんて呼んでるじゃない」
「ほら、それ。すっごく違和感ある。響でいいよ、私達友達でしょ?」
クスクス笑ってそう言えば、千里は破顔して嬉しそうに頷いた。
「うん、分かった。ひ、響」
「そんな緊張しなくても」
クククと喉を鳴らして笑う。
「す、直ぐに慣れるわよ」
「ん、じゃまぁ、よろしく」
ポンポンと千里の肩を叩いた。
「任せて」
胸を張った千里は、優等生らしく笑う。
「明日から、あいつを巻くの手伝ってよね」
「及川君?」
「そう。あんなに言ってもへこたれない奴なんて初めてなんだけど」
困惑したように眉を寄せる。
素っ気なく返せば、ほとんどの男が高飛車で嫌な女だって諦めてくれるのに、彼のしつこさはいったいなんなのよ。
「フフフ、及川君めげなかったね。響にあれだけ言われて引かないなんてある意味強者よ」
「お陰で悪目立ちしたし」
やってらんない、と溜め息を吐く。
「交わすのは手伝うけど。及川君、粘り強そうよ」
「そんなの嬉しくない」
苛々させられるだけじゃん。
爽やか青年は、スポーツ少女と戯れてて欲しい。
適材適所と言う言葉を是非とも覚えてもらいたいものだ。
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