第37話

テスト期間は粛々と進む。


学校が午前中で終わるから、私は午後からの時間を持て余していた。



バイトも休みだし、出掛ける所も特にない。


自宅に引きこもったまま過ごした午後。



こんな事なら無理にでもバイトを入れておけば良かったと思ったのは、テスト3日目の事。


いつもなら、週末にお祖父ちゃんに会うのだけど、今週はそれもない。



お祖父ちゃん、仕事のし過ぎで体壊してないかな?


早めに終わったテストを裏返して、黒板をぼんやりと見つめる。



監督の先生は、教壇に頬杖をついて眠りこけている。


あんなんじゃ、監督の意味無いんだけどね。


蔑視するように微笑んで顔を逸らした。



窓の外はギラギラとした太陽に照らされている。


朝夕にまだ寒さが少し残ると言うのに、日中の太陽は厳しくなっているようだ。



今日辺り、遊びに出てみようか。


夕方からなら涼しいだろうし。



家に籠ってるのも、そろそろ限界だもんなぁ。




チャイムが鳴って、一斉に騒がしくなる。


「テストを提出した者から帰っていいぞ」


先生のその声に、生徒が反応する。



テストを提出して、帰り支度を始める生徒達に混じって、私を帰り支度を始める。




「テストどうだった?」


駆け寄ってきたのは千里。


「まあまあかな」


こんなやり取りを数日繰り返してる私達。



「相変わらず」


「そう言う千里はどうなの?」


学年一の秀才だから、問題無さそうだけど。


トップ合格したのは伊達じゃないもんね。



「まぁ、そこそこね」


「千里も相変わらずの返事じゃない」


「フフ、そうね」


「でしょ」


顔を付き合わせて笑い合う。


「じゃあ帰ろう」


「ん」


頷いて立ち上がる。


生徒のほとんどが帰宅を始めていて、教室に残ってるのは私達を含めて数人。



チラチラとこちらを見ていたクラスの男子が、何かを決意したように近寄ってくるのが、視界の端に映って慌てて移動を始めた。



「急ごう、千里」


「えっ?」


戸惑った千里の声も気にせずに、急いで教室の入り口へと向かった。



「あ、あの、し、篠宮さん」


後ろから掛けられた声に、あっちゃ~遅かったかと小さく溜め息を吐く。



聞こえない振りで行くか。


うん・・・今日は耳日曜作戦だ。

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