第22話

「ありがとうございました」


3人の女子高生を見送って、カウンターから出た。


返却済みのDVDを籠に入れて、陳列棚に向かう。



一つずつ棚に戻しながら、整理整頓していく。



それにしても、ウルフって若者に人気なんだなぁ。


時々、夜に唸りを上げる何台ものバイクを見かけるけど、あれなのかもな。


興味が無いから、気にして見てなかったけど。



集団で群れてる若者達って感じなんだろうなぁ。


抗争だかなんだか知らないが、一般人に迷惑かけなきゃ良いけどさ。



そんな事を考えて、ふっと頭に浮かんだアンバー。


そう言えば、あの夜の彼もそう言う出で立ちだった様な。


不良と呼ばれる部類の人種の彼。



目元にかかるアッシュブラウンの髪、色っぽい口元。


あれは極上の部類だったなぁ。



名前・・・なんだったっけ?


あれ?教えてもらったような・・・ま、いっか。



まぁ、もう会うことは無いだろうから。




「さぁ、仕事仕事」


頭の中から、雑念を掻き消して作業を再開した。


関係ないことをいちいち考えてても仕方ないもんね。


今はバイトに勤しもう。











「響ちゃん、休憩しよう」


本屋から戻ってきた社長が、ドーナツ屋さんの紙袋を手に声をかけてきた。



棚戻しもちょうど終わったところだったので、素直に頷いてカウンターへと戻る。




「いや~響ちゃんは働き者で助かるなぁ」


山積みなってた返却済みのDVDが置き場から無くなってることに感動してる社長。


いやいや、給料分は働きますよ。



「そうですか」


「そうそう。響ちゃんが入る前に止めた子はサボってばっかりだったからね」


「はぁ・・・」


社長の緩い感じが悪いんじゃないのか? と思いつつも曖昧に返事した。



私の入ってる時間はだいたい二人のバイトがいる。


今日は社長が居るので、もう一人はお休みだけど。


彼女は、私と同じ高校生で真面目そうな感じの子。



10時以降は大学生の男の子が二人やって来る。


その人達と入れ替わりに私は帰宅。



ローテーションで週に4日ほど、バイトに来てる。


本当は週3日って話だったんだけど、最近何故か一日増えた。



私としてはお金になるので、バイト時間が増えるのはありがたい。



「さぁ、ここに座って食べよ」


社長は椅子を二つ並べてドーナツとパックのジュースをカウンターに置いた。



緩い・・・緩いよ、社長。


カウンターはテーブルじゃないからね。

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