第20話

「若気の至りでしょ」


フフフと笑ったら、


「年より臭いわよ」


と笑われた。



ウルフの話題で盛り上がる生徒の横を通り抜け、下駄箱に向かう。




「井上」


千里を呼び止める声に二人で振り返る。


そこにいたの担任の40代の体育教師だ。


「帰るところ悪いが、次回の代表委員会の書類整理を手伝ってもらいたい。頼めるか?」


申し訳なさそうな顔はしてるものの、千里に断らせるつもりは無さそうだ。



「あ、はい。響、ごめん、先に帰ってて」


「りょ~かい」


千里は人が良いから断らないんだよ。


損な性格だといつも思う。



「悪いな、篠宮」


「別に」


先生を一瞥して歩き出す。



「響、また明日」


背中にかけられた千里の声に振り返らずに片手を上げた。


クラス委員は色々と大変だな。


私には絶対向いてないと思いながら、バイト先のレンタルショップへと向かった。




バイト先の店は、大手と違い下町のレンタルショップなので、こじんまりとしていて気に入ってる。


無理に愛想を振り撒かなくても良いし、静かで居心地が良い。


レンタルショップの隣にある大きな本屋の社長が、趣味と実益を兼ねて運営してるので、何かと緩い。


私にはちょうど良いバイト先。


中々良いところを見つけたと思ってる。








「お疲れさまです」


店に入ってすぐにあるカウンターへと挨拶をすれば、


「おつかれ、響ちゃん」


社長自らが店のエプロンを着けて店員と化していた。



「社長、またカウンターに入ってるんですか?」


「うん、暇だしね」


呆れ顔で聞いた私ににっこりと笑った社長。



暇潰しの道楽にレンタルショップを経営して、尚且つ店員となる不思議な社長だ。



「着替えてきます」


カウンターを通り越して、奥のスタッフルームへと進んだ。


「はいは~い。いってらっしゃい」


ひらひらと手を振ってるであろう社長は、おおらかで人が良い。


彼のお陰で、このバイトにもすぐに慣れたのは間違いない。

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