第19話

両親と違って、私に無償の愛情を向けてくれるお祖父ちゃんは、私にとって大切な存在だ。


お祖父ちゃんが居てくれたから、今ここにいると言っても良いぐらいに。



母親とは特殊な理由で離別したお祖父ちゃんだけど、決して情のない人じゃない。


だって、私に相当な愛情を注いでくれてるもん。



別れた妻が亡くなった後に、私の母親とも何度か接触を試みた様だけど、受け入れなかったとお祖父ちゃんは言ってた。


彼女には彼女なりの理由があるだろうから、そこを責めるつもりはないけど。


私に接するお祖父ちゃんを見て、母親は随分と損をした様な気がする。


優しく情深いお祖父ちゃんを知る事が出来なかった母親は、家族に愛情を向ける術を学べなかったんだろう。



その結果が、家族の解散に繋がったのかも知れない。


まぁ、解散させたのは、私だけどね。



フフフと自嘲的な笑みが口元に浮かんだ。






「帰ろう、響」


ホームルームが終わって、鞄を持った千里がやって来る。


「ん」


鞄を持って立ち上がる。



「今日もバイト?」


「そっ」


父親からの生活費の振り込みもあるし、お祖父ちゃんがお小遣いをくれるんだけど、お金は貯めておきたい。


いつかは、一人で生きていかなきゃなるもの。



「じゃあ、途中まで」


「ん」


そんな会話をしながら廊下に出た。



帰宅する生徒で賑わうそこを千里と並んで進む。


いくつかの男女のグループが出来ていて、何やら楽しそうに会話していた。


漏れ聞こえるのは、彼氏の事や遊びの事で。



これを青春と言うんだろうと、他人事のように思っていた。



「ねぇねぇ今週末のウルフの集会に行くの?」


「おう、行く行く」


「今回のは大きい集会なんだよね」


「ああ。敵対してた夜叉をやっとぶっ潰して、長い抗争が終わったからな」


「すご~い」


「まぁ、俺は下っぱだから、大して役に立ってねぇけど。総長達が頑張ったんだぜ」


そんな会話をしてたのは、派手な格好をしたグループ。


ヤンキーとギャルって、感じの。



時々耳に入るウルフって名前。


この辺を仕切る暴走族だって言うのは、最近知った。



興味なんてないから、それ以上の事は知らないけどね。




「物騒な話してるわね」


千里とは眉間にシワを寄せる。


真面目な千里にしてみれば、暴走族はイレギュラーなんだろうな。

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