第18話

お昼が終われば午後の授業が始まる。


眠気と怠さと戦う私をよそに、授業は進む。


目を擦りながらも、ノートを取る。


授業に置いてかれるわけにはいかないからね。


自分で選んだ道だから、中途半端に手を抜いたりしたくないもん。



窓際の一番後ろの席に陣取る私は教室全体が見渡せる。


クラスメイト達も同じ様に静かにノートを取っていて、教壇に立つ先生はテストに出る範囲に分かりやすく色チョークでラインを引きながら説明していた。


取り終えたそれに先生の指示通りマーカで線を引いていく。



要点さえ掴んでいれば、中間テストも問題は無さそうね。



「一学期の中間テストはこのぐらいの範囲だ。分からない者がいたら放課後にでも聞きに来るように」


先生はそう言うとチョークを置いた。


ちょうどいいタイミングでチャイムが鳴る。


キーンコーンカーンコーン。



「では、今日の授業はここまで」


そう言うと教壇の上の教科書をパタンと閉じて、先生は出ていく。


途端に騒がしくなる教室。


クラスメイト達は勉強道具をしまいながら、口々に話を始めた。


楽しそうに騒ぐ女子たちを冷めた目で見てる私はきっとクラスで浮いてるんだろうなぁ。


そう思いながらも、今の自分を止めたいとは思えない。



私も鞄に教科書を押し込める。


それから、頬杖をついて窓の外へと目を向けた。




ホームルームが終われば、バイトに行って、そして、自宅へと戻る。


それが今の私の生活スタイル。



すぐ近くで楽しそうに会話する女の子達は、放課後に遊びにいく予定をたてている。


キャッキャと騒ぐその姿が、ガラス越しに映っていた。



暢気で楽しそうだと思うけど、その輪に入りたいとは思えない。




千里とは、お互いが都合の良いときに遊んだりはするけれど、あんな風に騒ぐことはないな。


女の子特有のテンションは好きになれないし。



そう言えば、今週末はお祖父ちゃんが来るんだっけな・・・予定を思い出す。


週に一度訪ねてくれるお祖父ちゃんは心配症だ。



独りには慣れてるから大丈夫なのにな。



私に会いに来て、必ずご飯を食べに連れていってくれるお祖父ちゃんも、本当は仕事が忙しいはずなのにね。


無理して会いに来てくれてるんじゃないかと思うと申し訳なくて。



『可愛い孫に会う楽しみを取るんじゃない』


って、あの人はきっと笑うんだろうけど。

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