第88話
パーティー当日に迎えに来てくれたのは西川さん。
彼の運転する車で連れて来られたのは、芸能人通ってそうなお洒落な美容院だ。
カリスマとかって呼ばれる人が居そうな雰囲気の店に、超私服の私が入ってもいいのかと躊躇われるぐらいの場所。
「支度が終わった頃に、キング達と迎えに来るからね」
運転席から手を振った西川さんは、店の前に私を一人残し颯爽と去っていった。
ここに一人で入れと言うのか?
ガラス張りのドアを神妙な面持ちで睨み付けていると、カランコロンと耳障りの良い音がしてドアが押し開けられた。
「いらっしゃい。いつまで経っても入って来ないから迎えに来ちゃったわ」
と綺麗に微笑んだお兄さんは、お姉さんだろうか。
白い清潔なシャツを第二ボタンまで開け、黒い細身のパンツを履いた魅惑的な人。
そしてなにより、凄く色気のあった。
「あ、すみません」
「さぁ、入って」
女っぽい仕草で私の背中を押して促してくれたその人に従って、恐る恐る店内へと足を踏み入れる。
「「「いらっしゃいませ」」」
店内のあちらこちらから聞こえる元気な声。
広くて明るい店内は、普通の美容院の椅子じゃな
い座り心地の良さそうな高級感たっぷりの椅子がいくつか設置されていた。
その前にはピカピカに磨かれた大きな鏡がある。
店内には既に2人のお客様がいた。
如何にもお金持ちな装いのその人達に、ますます自分が分相応な気がした。
テキパキとしたスタッフは皆笑顔で、自分の担当している客と和やかに会話してる。
へぇ〜意外にもその辺はアットホームな感じなんだね。
店構えから考えていた様な冷たい感じはまったくしなかった。
「さぁ、こちらに座ってね」
「あ、はい」
入り口から一番奥にある席に案内された。
近くにドアがもう一つあり、フィッティングルームとプラカードが下がっている。
ここで、着替えも出来るんだ、呑気な事を考えながら椅子に座った私に鏡越しに案内してくれたお兄さんお姉さんが声をかけてきた。
「挨拶が遅くなったけど、店長の
透き通るような白い肌をした中性的な綺麗な顔で微笑んだ。
名前からして男の人なんだよね、多分。
薄いシャツを通して胸板の薄さも男の人っぽいし、声だって耳障りのいい男の人の声だ。
「あ、市原瞳依です。こちらこそよろしくお願いします」
鏡越しに軽く頭を下げた。
「瞳依ちゃんて呼んでいい?」
「はい」
お好きなように呼んでもらって構わないけど。
やたらと距離感が近いな、この人。
「私の事は好きに呼んでね。満でもミツでもいいわ」
「じゃあ満さんで」
「ええ。しかし、聞いてた通りに本当美少女なのねぇ」
うっとりした瞳で見つめられた。
美形の人にそんな風に見られるとドキドキしちゃうわ。
貴方に比べたら、私なんてまだまだですよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます