第87話
一緒に夕飯だと言い続けるキングを三村さんに押し付け...いや、任せ私と樹は会社を後にした。
今から始まるのは女子会。
断然こっちのが楽しいに決まってる。
キングと一緒にいたら常に嫉妬や妬みの視線に晒されて落ち着かないしね。
樹と2人でやって来たのは、お馴染みの居酒屋。
この店の店長とも気心が知れてるし、雰囲気も気に入ってる。
「しかし、あの会社に上手く溶け込んでるのね。瞳依にしては珍しい」
ぐい呑に入った冷酒をちびりと飲んで樹が言う。
カウンターに並んで座るのは私達2人だけ。
「溶け込んてると言うか、周りの人が馴れ馴れしいというか。まぁ、楽しくはあるけど」
「それなら良かったわ。強制的に就職させられたって聞いた時にはどうしたものかと思ったけど」
「いつもありがとうね」
「馬鹿ね。友達なんだから心配して当たり前よ」
「フフフ、樹は最高の親友だよ。高校の時に樹と出会えて良かった」
心の底からそう思う。
彼女が居なかったら、今の私はきっと寂しいままだったもん。
「私も瞳依に出会えて良かったわよ。見てて飽きないし、動きが面白いもの」
私は珍獣か!
まぁ、照れ屋な樹の辛辣な物言いには、慣れてるけどねぇ。
「はぁ···面白いって」
「フフフ、冗談よ」
と言いつつも目はマジな気がするよ。
「冗談に聞こえない」
「あら、失礼ね。それより、キングにも大切にされてて良かったわ。あれはちょっと別の意味で警戒が必要だけど」
「別の意味?」
「瞳依は知らなくてもいいわよ。その方が時間稼ぎ出来るし」
自分の事なのに知らないで良いなんて、どうなんだろうか。
まぁ、樹の言うことはいつも正しいから、いっか。
深く考えないのが私だし。
だから、時間稼ぎの意味は聞かなかった。
「あ、そうそう。電話でも伝えたけどね、すっごい高いドレス買ってもらったんだよ。経費なんだってぇ」
「所謂、必要経費ねぇ。言ってたパーティーは今週末だっけ?」
「うん、そう」
「どこでやるのが聞いてるの?」
「さぁ? 当日、家に迎えに来てくれるんだって」
「さぁ···って興味を少しぐらい持ちなさいよ。自分が行く場所でしょう」
あ、樹が呆れてる。
「だって聞いてもよく分からなかったんだもん」
そう言って酒ライムを一口飲んだ。
ん、喉越しいいな。
「本当、呑気なんだから。これから色々と周囲に気をつけてなさいよ」
「は〜い」
「絶対分かってないわね」
やれやれと首を左右に振った樹と、この後も深夜まで飲み続けたのだった。
もちろん、翌日に響かないようにお酒の量は調整しましたよ。
仕事の出来る社会人ですもの。
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