第64話
チャラララ、急に鳴り出したスマホを慌てて鞄から取り出した。
画面を見て、まさかの相手に目を見開く。
今ってデートの最中じゃないんだろうか。
切れることなく鳴り続ける着信音に、大袈裟に溜め息をついて、画面をタップした。
「はい」
『瞳依ちゃ〜ん』
聞こえてきた陽気な声に、なんてタイムリーな電話なんだろうかと先程会話を盗みぎしてた2人組をちらりと見る。
彼女達がこちらを見てない事を確認して小声で対応する。
「どうしたんですか? 裏予約に何か不具合でもありましたか」
キングが今日みたいな日に電話をかけてくるなんてそれしかない。
『別に不具合なんてないよ』
「そうですか。なら良いですけど」
『今日、俺の誕生日なんだよね』
「知ってますけど」
彼女達の話を聞くまでちょっと忘れてたけど、それをお首にも出さないように抑揚なく返す。
『じゃあさ、言うことない?』
期待するようなキングの声に、今ここでお祝いメッセージを言えと言うのか、と溜め息をつく。
「そうですね」
『じゃあじゃあ···』
ワクワクと期待した様な声を出すのは止めて欲しい。
でも、言わないと、この人電話切らないんだろうな。
周囲が私の方を見てない事をしっかりと確認する。
「お誕生日おめでとうございます」
スマホを口元に当てて小声で言うと、
『ありがと。て言うかどうして小声なの?』
と突っ込まれた。
「今、出先のカフェなんですよ」
周りに人がいて賑わってるんですよね。
その上、近くの席にはキングのファンのお姉さん達が居るし。
『瞳依ちゃん、1人でお出かけ中なの?』
「はい、ブラブラしてますよ」
『どこに居るの?』
「繁華街ですけど、なにか?」
『お! 近いね。俺も繁華街だよ』
「まぁ、そうですね」
知ってるし、キングはこの時間帯なら繁華街の五つ星ホテルで予約のお姉さんとランチしてるはずだよね。
『会いに行こうかな。何て名前のカフェ?』
「言いませんよ。来なくていいです。ところで何歳になったんですか?」
来られちゃ困るので、話を反らす。
そう言えば、キングの年って知らないから聞いておこう。
『25歳。俺に興味湧いた?』
「あ、いえ、特には」
5つ上だったんだね、なんだか意外。
キングって喋り方が軽いから年が近い気がしてたんだけど。
そりゃもちろん、年上だとは思ってたけどね。
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