第61話
「だから、瞳依って色々規格外だし、興味深いのよねぇ」
「はぁ、まぁ、そうですか」
食い気味に話してくる伊藤先輩に苦笑いで肩を竦めた。
私だって喜んでこの仕事についた訳でもないので、そんな事を言われても複雑な気持ちなわけで。
キングも何かと大変なんだね。
まぁ、自分の女遊びのせいだから仕方ないんだけど。
あれだけ顔が整ってて、お金持ちとくれば、女なんて入れ食いだろうけど、そこは節度と常識の上で頑張ればいいと思う。
あくまで、他人としての主観である。
「瞳依ってば、本当変わってるわよね」
「そうでもないですよ」
「キングの受付係なんて中々なれるものじゃないし、瞳依はキングに可愛がられてるじゃないよ」
「何時でも代わってあげますよ」
そして、普通の受付になりたい。
「いや、それは遠慮しとく」
「伊藤先輩だって、嫌なんじゃないですか」
「当たり前でしょう。くだらない事に巻き込まれたくないもの。観賞用はあくまでも観賞用よ」
伊藤先輩はそう言いながら自分の巻髪を指でくるくるとしながら楽しそうに笑った。
あなただって私と変わんないじゃん、と思ったけどあえて突っ込むのは止めた。
何を言っても私がキング専属の受付係なのは変わんないしね。
キングの心境の変化のお陰で、面倒事も暫く続きそうだし、気合入れて仕事しますか。
裏予約を取る為にやってきたであろうお姉さんが、こちらに向かって歩いてくるのをぼんやりと見つめながら、ブラックノートを開いたのだった。
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