第59話

「専属受付って、今まで何人居たんですか?」

「瞳依で、確か3人目だったかな」

「へぇ、私で3人目なんですね」

「知らなかったの?」

「まぁ、そうですね」

必要以上に詳しく聞いてないし。

自分の役割と給料しか知らないんだよね、実は。


「噂とか聞いたことない?」

「あ〜それも聞いた覚えないかもです」

「本当、キングに興味なかったのね」

「ですね。あ、でも、この街の支配者で女好きってぐらいは知ってましたよ」

流石に、全く知らないわけじゃない。

この街に住んでたら少なからず周囲から漏れ聞こえてきたし。


「フフフ、本当変わった子ね。まぁいいけど。で、受付係に話を戻すけど」

「あ、はい」

「1人目はキングの妹さんがやってたのよね」

「へ〜妹さん居るんですか」

「そうなのよ。キングの上にお兄さんも居るわよ」

「ふ〜ん、キングって真ん中の人だったんですね」

「真ん中の人って」

吹き出した伊藤先輩に、ロビーに居た人達の視線が集まった。

そんな爆笑しないでくださいよ。

今仕事中なのに。


「し〜っ、伊藤先輩、笑い声が大きいですよ」

人差し指を自分の口元に当てる。


「ちょっと、私が悪いみたいに言ってるけど、笑わせたのは瞳依じゃない」

何故か怒られた、解せぬ。


「受付係に話を戻してくださいよ」

ちょっとムッとして話の続きを促した。

だいたい、私は悪くないと思う。


「妹さんは結婚退社するまで勤めてたんだけどね?」

「ほう、寿退社ですか」

「その言い方ババ臭いわよ」

「煩いですよ。話の続きをお願いします」

「最近、瞳依が強くなった気がするわね」

「順応性あるんですよ」

ここでは弱いと生きてけない気がする。


「まぁいいわ。イジられキャラなのは変わりないし」

「···」

そこはぜひとも変わりたい。

伊藤先輩に毎日遊ばれるのは嫌だよ。


「妹さんが退社して2人目に受付係になったのは、妹さんの幼馴染の女でね」

「はぁ」

「そいつがかなりの曲者だったのよ」

「ほう」

「ちょっと真剣に聞いてるの?」

「聞いてますってば」

ちょっと飽きてきたけど。

どうでも良くなって来たので、軽く受け流してたら伊藤先輩に怒られた。


「最初は受付係の仕事をこなしてたんだけど、そのうちキングに本気で惚れちゃってね」

「ありがちなパターンですね」

「でしょ? 次第に予約を出鱈目に組んで自分と一緒にいる時間を増やしたり、キングに色目を使って落とそうとしたりして、ご乱心し始めた」

「1番だめなやつですね」

公私混合はいかんよ。

仕事しなはれ!

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