第57話
噂に流れるキングは残忍で冷酷で、絶対的な支配者。
でも、側で接するようになっても、キングはそんな姿を一度だって見せたことが無かったから、私は忘れてた、あの人が支配者だってこと。
三村さんに改めて言われて、あの寒気のする黒いオーラを発するキングが怖かったことを思い出す。
昨日の夜、ピリピリと肌に感じたのは、多分恐怖。
「社長は、いえキングは強くならざるおえなかった。今の地位を築き上げる為に彼は沢山の物を犠牲にしてきたんです」
「···はい」
「だから、1つぐらい欲しい物を手に入れて貰いたいと思っています」
キングの欲しい物は何なのだろう。
私も、それを手に入れるのを手伝えたりはするんだろうか。
『瞳依のお人好し』樹にはそう叱られるかも知れないけど、微力ながらも手伝おう。
だって、昨日の夜に見たキングの背中がとっても孤独に見えたから。
「私も、私も手伝います」
「···っ、そう来ましたか」
口元に手を当てて、困った様に眉を下げ考える仕草をした三村さん。
あれ? 私何かを間違えたかな。
「あ、そうですよね。私じゃ足手まといになりますね」
手伝うだなんて、一介の受付係がおこがましいよね。
そりゃ、そうか。
「いえ、そういう事でもないんですが。まぁ、いいでしょう。手伝ってください」
大変だと思いますが、と付け足した三村さんの瞳がどこか楽しそうに見えた。
「はい、がんばります」
孤独なキングの手に入れたい物ってなんだろうな。
お金持ちのキングが簡単に手に入れられない様な金額って、相当じゃない? などと真剣に考えていた私は三村さんが意地悪く目を細め私を見ていただなんて知らなかった。
「キング、苦労しますよ」
三村さんの小さな囁きは私には届かない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます